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 一日ずっと曇り空で、日が暮れるときも夕焼けはなく、ただ衰えていくように空が暗くなっていくだけだった。視界から色彩が落ちていく、そういう夕暮れだった。
 私は何か赤いものが幾つか並んで歩いていくのを見た。暗くて色が判らないと思っていたが、それが血をかぶったかのように赤い色をしていることは何故か判った。それは子供のようだった。子供の背丈の者が裏路地を進んでいる。
 それは私に向かって歩いてきていた。近付くにしたがって、その姿がはっきり見えてきた。
 全身真っ赤な色をした人影で、三人いる。
 子供くらいの身長で牛の頭をしていた。服は着ていなくて、赤い色は全身に生えた短かい毛の色だった。牛頭人身の異形が三人縦に並んで行進していた。
 私は恐しさに思わず足を止めたが、彼らは私を気にすることもなく、脇目をふらずに進んできた。すれ違うとき、強烈な獣臭が臭った。そのまま私は立ち竦んでいた。
 しばらくしてから勇気を振り絞り、ふりむいた。彼らの姿を目で探したが、もうどこにもいなかった。


(記: 2021-10-28)

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