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雪の虫

 雪に混じって、白い虫が空を舞う。
 空から降ってくる雪の一片にしがみつき、一緒にくるくると舞い降りる。
 この虫はみな雌である。雌は雪にしがみつき落ちていきながら、雄の訪れを待つ。
 雄は雪の間を飛びながら、雌を見付けると同じ雪片に取り付いて、求愛行動をする。
 漂っている雪のきれいな結晶を捕まえて、雌に渡そうとする。雌はそれが気に入れば交尾に応じる。雪が地上に落ちるまでの逢瀬である。
 雄の差し出した結晶が気にいらなければ、雌は雄を受け入れず、その雪片から離れて空高く舞い上がり、また適当な雪の一片を選んでそれに取り付き、いっしょに舞い降りる。
 何故、雄が雪の結晶を雌に贈り、雌がどのような基準でそれを受け入れたり、拒絶するのかは判らない。そもそも雪の結晶を贈る行為に何の意味があるのか、何故雪片の上でそのような行動をするのかも判らない。


(記: 2021-11-18)

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