掃き溜めに吐いていく

 夜は掃き溜めのようだった。
幸福も不幸も吐き出せれたまま行き場を失くして漂っている。沢山の幸福や不幸が吐き出されていく。それは涙や吐瀉物と一緒に吐き出されることもある。
吐き出すことがむずかしい幸福や不幸もある。
 吐き出すと少し楽になるみたいだね。漂っている幸福も不幸も朝、ゴミの回収業者が回収してくれるみたいに。吐き出すことがむずかしい幸福や不幸を吐き出す事ができたらどれだけ楽なんだろう。すぐに吐き出せる人はすごいと思う。僕は誰かが吐き出したものを見ているだけだ。
 次の朝には吐き出した事を忘れていることもあるみたいけど、きっとその程度のものだったんだ。そう思うとなんだか損した気分になって急に苛立たしくなる。
 それでもあの澄んだ朝焼けを見ると全部がどうでも良く、心地良い気分になる時がある。
 吐き出したものが昼まで漂い続けるものもあるし、ずっとずっと染み付いてしまうものもあるみたいだけれど。廃品回収業者に依頼しないといけないのかな。
 

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?