移住生活、はじめました。〈東京編〉
「私、東京に住もうと思うの」
そう宣言すると、家族からは驚きの声が飛んできました。
かなり心配され、やんわりと反対の言葉を受けました。
でもこのときの私は、そこで諦めたりせず、自分の気持ちを素直に伝えました。
無理かどうかはやってみないと分からないこと。
生活や仕事に関しては正直なところ自信がないこと。
けれど、やらなかったらこの先絶対に後悔すると思う、ということ。
東京に住むことは、田舎に住む私の学生の頃からの夢の一つでした。
大学進学、就職、と何度もチャンスはあったのに、不安の方が大きくて、夢は見て見ぬふりをして諦めてきました。
今回も東京に住みたい、という夢が再び生まれてから実行するまでに、何も迷わなかったわけではありません。
面倒臭くなって投げ出してしまいたくなることは何度も何度もありました。
それなのに、今回は何かが違いました。
新しい自分として生きていきたい気持ちの方が大きく、それが原動力となって進んでこられた気がします。
振り返ってみると、その過程で決心が揺らぐ瞬間に心の支えになった考え方が3つありました。
一つ目は、「やめる勇気も持っておく」という考え方です。
ただし、あくまでもこれは選択肢として、です。
何事もやってみないと分かりません。
私の東京移住も、できるのか無理なのか、やってみないと分かりませんでした。それは周りの人も私自身も同じです。
でも、よほど危険なことではない限り、どんなことでも試してみてから判断したい、と私は思っています。
だから、迷ったらやってみる、という勇気が必要になります。
そして同じくらい必要なのが、だめだと思ったら引き返す勇気です。
試してみて自分には合わないな、と思うこともあると思います。そういうときは思い切ってやめる勇気も大切です。
この、やめる勇気というのは不思議なもので、持ち合わせているだけで気持ちが楽になる効果もあるのです。
やめてもいいんだ、と自分の中に選択肢を残しておくことで気持ちに余裕が生まれるのか、新しい一歩を踏み出す後押しになってくれるものです。
二つ目は、俯瞰して見ることです。
私の場合は、特に「不安」に対して俯瞰して見るようにしていました。
準備を進めている間、いろいろな不安が私の頭の中を駆け巡っていました。
東京になじめないかもしれない
怖いことがあるかもしれない
実家から離れて寂しくなるかもしれない・・・
そんな不安は全部「かもしれない」が付いています。
つまり感じている不安は、まだ実際に起きたものではありません。自分の想像で作り出した不安におびえているだけなのです。
そのことに気が付いたとき、私はとても気持ちが楽になりました。
やってみないと分からない、と言いながら、起きてもいないのに「かもしれない」ことに怖がっているのはもったいない。
同じ「かもしれない」を想像するなら、東京で楽しいことがたくさんあるかもしれない、素敵な出会いがあるかもしれない、と幸せな想像をしてみようと思い直しました。
そうすると自然とワクワクしてきて、東京移住がますます楽しみになってきたのです。
三つ目は、母からもらったある言葉から生まれた考え方でした。
それは、
5年後に帰ってくることはできるけど、5年後に行くことはできないかもしれない
次々に浮かんでくる不安だけではなく、物理的な手続きや、周りの人の説得など、やらなければいけない課題はたくさんあって、だんだん面倒臭くなってきます。
今回の東京移住に関しても、たくさんの障害物はありました。
家族の説得、転職活動、土地勘がない中での新居探しや契約事、退職するための準備、など、どれも大切で手を抜けなくて、発狂しそうになったことも。
それらに加えて、私はこの年で東京に行くなんて、という引け目も感じていました。
今の時代、年齢という概念はあまり関係がなくなっているものではありますが、東京には若い人が多いイメージがあったので、10代や20代ではないのに今更行っても大丈夫なんだろうか、と私は感じていました。
そんな私に、母が言いました。
「5年後に帰ってくることはできるけど、5年後に行くことはできないかもしれない」
その言葉は私の中にストンと入ってきました。
5年後の私よりも今の私の方が挑戦しやすい状況なんだ、と。
そっか、それなら今やってみよう、と何かが吹っ切れたような感覚になったのを今でも覚えています。
「5年後地元に帰ってくることはできても、今より5歳年を取ったあなたが東京に出ることは、今よりハードルが高く感じるかもしれない」という母の言葉は、私にとって大きな後押しになりました。
そんな心の支えを経て移住した東京。
私が当時不安に感じていたことは一つもなく、総じて楽しく東京を満喫しています。
あの時思い浮かべていた5年どころか、その倍以上の年月が経っていることに我ながら驚きますが、思い切って挑戦してよかった、と心の底から感じています。
むしろ、あの時諦めていたらアレもコレも経験できなかったんだ、と想像して愕然とするくらい、私は今の環境を楽しんでいます。
だって、テレビで紹介されたカフェに仕事帰りに行くことも、芸能人を見かけることも、イベントとコンサートを一日でハシゴすることも、東京にいないと経験できないというのに!
以来、私は何かに挑戦する時には必ずこの3つの考え方をするようにしています。
そうすれば、どんなことでも気軽に新たな一歩が踏み出せるようになるはず。
そんなに怖がらなくても大丈夫。
きっと世界は優しいよ。
私と同じように夢に向かって踏み出すかどうか迷っている貴女へ。
そして、憧れだけを抱いて諦めてしまった学生時代の怖がりな私へ。
それでは、皆さま、良い夢を。
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