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Angel Wing

8
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記事一覧

Angel Wing ~8~ 「ルディア・スパークルウィング」

前回

「なんだ! 何が起こっていやがるんだ!」

 ランスウィングは驚愕の叫びをあげながら、目の前で輝きを増していく光に目掛け、今一度光球を投げつけた。だが、それまでの攻撃と同様、光球は光の中に吸い込まれてしまう。

「チクショウ、聞いてねえぞ! こんなこと……願いの天使だからって!」

 受け入れがたい事実に、ランスウィングは我を忘れて激昂した。そうしている間も光の輝きは留まることを知らず、や

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Angel Wing ~7~ 「飛び立つ翼」

前回

「……ここは……?」

 気がつくと、美羽はキラキラと輝く光の中に浮かんでいた。あたかも柔らかな日差しに包まれたような温もりを感じながら、少しずつ記憶を辿っていく。ここはどこなのか。自分はどうやってここまで来たのか。ここに来るまではどこにいたのか。自問していく中で、不意にある答えに辿りついた。

「ルディア……」

 その名を呼ぶと、光の中から一際強い光が飛び出し、人の輪郭を形成した。やが

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Angel Wing ~6~ 「強襲する悪意 そして……」

前回

「あ、あんな所に人!? 浮かんでる? ど、どうやって……!?」

「よう……随分といいご身分じゃねえか。そうやって運んでもらうのか?」

 突然の出来事に混乱する美羽をよそに、男はルディアをせせら笑った。

「パトリック・ランス!」

 それに呼応するルディアの叫びが聞こえた直後、美羽は背中が軽くなったのを感じた。その一瞬後、視界が白一色に覆われる。その正体は新雪のように輝き、空を舞う純白

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Angel Wing ~5~ 「運命の出会い」

前回

「……それでね、転んだときに泉が光ったような気がしたの」

「この泉が?」

 傾き始めた太陽を背に、美羽と真帆は土手に座って泉を眺めていた。連れ立っての下校中、美羽がどうしても話をしたいと主張したので、こうして足を止めているかたちだ。

「そう! それも二回もだよ? もしかして、願いの天使と何か関係があったりして!」

「でも、何も無かったんでしょ? 見間違いじゃないの?」

 真帆はそ

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Angel Wing ~4~ 「悪意は笑う」

前回

「……くっそ、あの天使め。メチャクチャやりやがって……」

 昼下がりの住宅街を、1人の男が足を引きずりながら歩いていた。黒を基調としたパンク風の服に、銀色の髪がよく映えるその男の体は、細身ながら筋肉で引き締まっており、行くところに行けば注目の的だろう。しかし今は、体中に傷を負い、歩くのがやっとという有様で、思わず目を逸らしたくなるほどだ。男は歩きながらブツブツと悪態を吐いていた。その足取

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Angel Wing ~3~ 「友と謎と」

前回

 昼休みのチャイムが鳴り、教室の生徒たちがそれぞれに移動を始めた。その波をかきわけるようにして、青い弁当箱を持った蒼いロングヘアの女子生徒が、机の上に突っ伏している赤毛の女子生徒に笑いながら話しかける。

「……今日も遅刻ギリギリだったね、美羽。毎朝毎朝、大変ですねえ」

「真帆、笑いごとじゃないんだってば。……毎朝毎朝、全力疾走。私、もう体力の限界……」

 美羽と呼ばれた女子生徒は、自

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Angel Wing ~2~ 「激走する少女」

前回

 街の空は晴れ渡り、辺りに咲き誇る花々と人々の笑顔が、春の隆盛を物語っている。その光景はまるで、新たな生命の息吹を表しているかのようだった。

「……遅刻、遅刻~!」

 そんな穏やかな陽気に包まれた早朝の空気を突き抜けて、焦燥感に満ちながらも、どこか間の抜けた声が街中を駆け抜けていく。

 声の主は、ブレザーの制服を身に纏い、癖のあるショートヘアを振り乱して街中を全力疾走する赤毛の少女だ

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Angel Wing ~1~ 「激突する翼」

 空は分厚い漆黒の雲に覆われ、不穏な空気を醸し出していた。辺り一面に散らばる瓦礫が、周囲の荒廃を物語る。その光景はまるで、世界の終わりを表しているかのようだった。

「……ハァッ!」

 そんな重苦しい静寂に包まれた空間を切り裂き、鋭く高い声が鈍い打撃音と共に響き渡った。

「チッ、意外としぶといじゃねえか!」

 それに呼応するように、今度は吐き捨てるような低い唸り声が聞こえる。

 二つの声の

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