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既成概念から解放されるために

皆様、こんばんは。コウイチです。本日のテーマは「既成概念から解放されるために」です。
実は私、ある本を読み終えて少々興奮気味です。「私が自分らしく仕事をしていくための心構えを教えてくれている!」と。その本は「修業論(内田樹著)」です。この本では著者が長年続けている武道における修業について論じられています。私は武道の稽古のため、道場に通っているのですが、そのような背景から「武道における修業の目的とは何なのか」考えるために本書を手にしましたが、実はビジネスへの向き合い方にも、とても深い示唆を与えてくれました。

私個人しては、本書における「修行の目的」とは「守破離」というプロセスでいうところの「離」の境地に至ることであり、そしてそれには「既成概念から解放される」ことが鍵になる、と理解しました。

それでは本書で特に印象深かった3点について述べていきたいと思います。

1、 昨日までのものさしが、今日はもう通用しない

武道的な術技のブレークスルーは、昨日まで自分の技量の上達を計測するために使っていた「ものさし」が、今日はもう適用できないというかたちをとる。

「修業論(内田樹著)」より

私のこれまでの仕事を思い返すと、社会人となって最初の2、3年はルールやマニュアルなど仕事の型を覚えて業務にあたっていました。「守破離」でいう「守」になります。そのうちに仕事を覚えていくと、自分なりに効率化など工夫を凝らして仕事ができるようになり、成果が出るようになっていきます。「守破離」の「破」ですね。そのうちに自らが新商品のアイデアを作ったり、現状の問題点を考え、自分ならではの仕事をしていく段階になってきました。それが本書の内容に関わる「離」に当たるかと思います。
新商品開発などの仕事になってくると目の前の仕事に注ぐ努力がそのまま成果につながるか、と言えばそうではありませんでした。そもそも課題設定自体がイマイチだったりする。もっと俯瞰したものの見方をして、適切な課題設定をする感性を身につけることが必要になります。私に大きな影響を与えてくれた以前の上司は「デスクにかじりついてプレゼン資料を作らなくていいから、現場や顧客のところに行って感性を磨け」と言っていたものです。また「自分が社長になったつもりで仕事をしろ」とも言っていました。私が商品開発という仕事を進めていく上で、もっと上位の概念である経営に関心を持つようになったのもその頃です。これまでの仕事の仕方の延長では通用しないため、自分なりの仮説検証を日々の仕事を繰り返し、その「感性」を磨いていきたいと思っています。

2、 「相手を敵とみなす」私をなくす

「敵」をなくすには、「敵」をなくすのではなく、「これは敵だ」と思いなす私を消してしまえばいい。

「修業論(内田樹著)」より

ビジネスの場でも競合に対していかに差別化し、シェアを高めていくことが基本だと思います。しかし本当に目指すべきなのは、人々の生活を豊かにするモノやサービスを創り出し、新たな市場を創ることのはずです。少なくとも私はそう思っています。
例えばそれはスマートフォンのようなものかもしれません。新しい需要を開拓することで、新たな市場が世に生まれ、世の中を豊かにすることが商品開発の仕事としてあるべき姿だと思います。スマートフォンのような社会的に大きなインパクトを持つものでなくても、特定の人から「これなしには生きていけない!」と思われるニッチな商品もこれに当てはまると思います(もちろんビジネスとして成り立つことが前提になりますが)。
それは言うは易く行うは難し。ではどうやって「相手を敵とみなす」私をなくせるのでしょうか。「老子」では嬰児(赤ちゃん)がある種の思想型として語られている、といいます。そしてそれは心身の自由、あるいは解放性ということの重要性からではないかと著者は指摘しています(本書90ページ)。既成概念に囚われず、赤ちゃんのように自由でオープンにいられるように日々心掛けたいと思います。

3、今のモノの見方から離れる

「今・ここ・私」という不動の定点と思われたものから離脱して、「今」ではない時間、「ここ」ではない場所、「私」ではない主体の座に移動することである。  そこから、「今・ここ・私」が遭遇した事態を俯瞰的に観察し、何が起きているのかを理解し、なすべきことがあれば、なすべきことをなす。それが武道的な意味での瞑想である。

「修業論(内田樹著)」より

商品開発において、時代の変化に応じて、それまでの事業活動に固執せず変化していくことが求められます。例えば、富士フイルムの事業転換がありますね。今向き合う課題に対して、俯瞰的に観察してこれまでのやり方に囚われずやるべきことをする。一見当然なことかと思いますが、これが中々できない。日々の積み重ねが本当に大事だと思います。

富士フイルムはコア事業だった写真フイルムの需要が激減するという市場環境の変化の中で、全社一丸となって事業構造の転換を進めてきたことで有名です。1980年代、カラーフイルムは拡大の一途にありました。そんな中、富士フイルムはカラーフイルムが成長し続けている1988年に世界発のフルデジタルカメラを発表したのです。当時、カラーフイルムは富士フイルムにとって利益の源泉でした。それにも関わらず、自らが先頭に立ってデジタル時代を見越した破壊的イノベーションの先駆者になったことがポイントです。

「富士フイルムが構造転換を成功させた新規事業の取り組み方とは?」より

4、まとめ

この本では「守破離」の「離」のことが中心のテーマではないかと冒頭に書きました。不確実な変化の激しい今の世の中だからこそ、「既成概念からの解放」を目指し、自由でオープンな姿勢を持ち続けることが必要なのだと思います。そういったことから、武道にこれまで触れる機会のなかった方にもこの本を読んでいただきたいと思いました。

読んでいただき、ありがとうございました。

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