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読了のおっさん18 数学ゴールデン(藏丸竜彦/ヤングアニマル)

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。

数学ゴールデン
(藏丸竜彦/ヤングアニマル)
2019年~ 既刊5巻

① タイプやテーマなど
 数学、高校生活、数学オリンピック、努力と才能、チームワーク、少数派の趣味、試行錯誤、ひらめき、友情、恋愛、ナイーブな心情

② 簡単な内容
 春に高校に入学を果たした主人公の小野田は、新入生代表挨拶で数学オリンピック出場を狙っていることを公言する。クラスでも浮いてしまい、
ひたすら孤独に数学のトレーニングを重ねている所に、七瀬マミという同じ高校の数学大好き少女が声をかけてくる。初めはその感性に偏った言動や解答に拒絶感を表していたものの、七瀬の数学への熱意と実力に驚かされ、小野田との交流が始まる。かくて結成された数学コンビは、かつて数学オリンピックに挑んでいた先生や、同じ世代の別の高校に通う数学徒との邂逅を重ねて成長し、
様々な数学の難問に挑んだり、数学の大会に出場するなど、青春を謳歌していく。

③ 読みどころ
 非常によく練られた数学の問題が出てきて、登場人物たちが様々なアプローチで問題に挑むさまが楽しい。数式ばかりの硬い本では決してなく、
数学を感覚的にとらえて感動する人物や、数学が苦手だからこそ素朴なアプローチから入り、それが難問を解く感覚につながる人物といった個性あふれるキャラクターのぶつかり合いが面白く、また、親しみやすいストーリー展開になっている。
交流や勝負を通じて、数学への周囲の理解の乏しさに悩まされたり、逆に仲間を得て視野が広がる楽しさに目覚めたり、時には恋愛描写もあったり、高校生らしくめきめきと心が成長してく展開は清々しい。
数学の解説部分を丸ごと飛ばして読んだとしても、それなりに学園青春物として味わえると思う。


④ 雑多な感想
 数学オリンピックや数学甲子園など、実在の数学に係る大会(の問題)が描かれており、40年以上生きたおっさんでも始めて知る内容も多かった。
ところどころに挟まれているコラムも良い。例えば「女心=f(x、t)」と置いて考察する等、世の中の事象を数式で表現すること(表現しようとすること)は、理にかなっているというだけでなく、損得抜きに楽しい作業と分かる(おっさんだけだろうか)。

 漫画という媒体は数学を説明するのにも役に立つように思う。積み上がってつながっていく感じ、ある集合が同じ仲間であることの表現、距離と時間の概念。幾何学に至っては全般的にイメージの世界でもある。考えてみれば漫画と数学は相性が良い。まだ、5巻までの発売であるが今後が楽しみである。

 今までも進学塾や学習教材の販売を行っている出版社が、箸休め的に小さな漫画を掲載している例はあったが、ヤングアニマルという青年誌で
本格的に数学を題材とした漫画が出たことは案外先進的なのではないだろうか。正直知らない定理も沢山出てきて、掲載されている問題をまともに解くことは困難だが、それでも考えたい、挑んでみたいという気持ちにさせてくれる。


⑤ その他
 協力の優位性について漫画の中で示しているのがとても良い。これはスポーツ系の漫画や学園もので多く取り入れられている要素だが、少数派の趣味的学問で孤独に数式に挑むイメージ(本当にひどぢ偏見であるが)の数学でも、結局は同じなのだと本作で語ってくれている。
 数学を苦手としている子供達が多い印象だが、本作を通じて大人として数学を勧めやすくなったなと感じている。

 以前おっさんは、彷徨うおっさん 未熟な宗教理解(神仏) にて、神仏を数式で表して説明したことがある。この時は本作にまだ触れていなかったが、本作コラムで「女心」を同じくf(x、t)としていたのを見て、改めて自分の立式を思い出した。例えば「世の中の全ての〇〇」に共通する性質や傾向を語るときに、言葉でごちゃごちゃ説明するよりも、立式してみましたと言って会話できることの方がはるかにスマートなように思う(賛否両論だけど)。
 他にも、空間や宇宙の理解には、幾何・代数ともに把握が必要な背景も、読んだ限り本作ならば、すんなり理解できる。。。と思う(数学というだけで結構な人数に拒絶が多いので、心情面ではちょっと自信ないけど)。

 本作にも出てくる数学甲子園の水準であれば、一応は高校数学までの知識が前提であるので、大学受験の経験がある人なら通過している。
アメトークなどでも話題になり、人気は出てきたものの、本当はもっと多くの人が興味を持って読める漫画の筈。是非手に取って頂きたい。

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