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彷徨うおっさん71  移ろいゆく幸福観(1/6) 物質的豊かさの限界

40年以上生きてきたが、幸福観について、時代と共に随分と移ろってきたように思う。昭和末期から令和の現代までに感じるところは以下である。

① 物質的な豊かさ≠幸福 ではなくなった。
② やりたいことという具体性の追求 ではなく 自由や個性と言ったもっと抽象的なものの追及 に変わった
③ 集団から個人の時代になってきた

あくまで、おっさんが長く生きててそう感じた、思ったというだけの話で、特にソースはないが、かくもこのような傾向があるように思う。

今回は、こうした価値観の変遷に伴い、世代間で摩擦や分断が起こっている状況、或いはうまく幸福が追求できなくなっている可能性について、
おっさんの体験を交えながら考察したい。

<物質的豊かさの追求は 資本主義と企業運営の副産物であるかもしれない>


① 物質的な豊かさ≠幸福 ではなくなった。

おっさんの経験を話す。

 最初に就職した会社でのこと、社員の決起集会的な集まりがあり、給料うち(明確な出勤日)でもあったので参加した。
 会も半ばになると、会場前面のステージに社長(当時60代)が登壇し、グダグダと今までの事業の成功譚を演説し始めた。
そして、最後に

「こうやって事業を一つ一つこなしていくと、また欲が出る、そこで皆さんにアイデアを。。。」

といった形で新規事業の話を再びグダグダし始めた。
 新規事業と言っても、政府の独立行政法人から管理使用権を入札で手に入れた巨大なプールを、さてこれからどう利活用しようかなどという、急な先行投資に対する状況説明だった。

 やれやれ、何も決まっていないのかよと、「買っちゃった!てへ!」みたいなやつじゃん。と、おっさんは肩をすくめたのを覚えている。

 また後に、アイデアと言っても結局、下っ端の意見は「考えが足りていない」などと、表面では批判してマウントを取りつつ、裏で良いアイデアだけ後で焼き直して、幹部連中が自分の手柄にする姿が見られた。
 そしてそもそも、高圧的な経営陣に対して、意見提案できる平社員などほぼいなかった。これだから大人はずるい、欲の塊だと思ったものだ。 

 そして一番耳に引っかかったのが「また欲が出る」という一言だった。


 15年以上前の話なのに、その一言だけは本当にハッキリ覚えている。それだけ違和感と言うか、耳障りだったのだと思う。

 企業運営というものは、こうした欲によって成立している点があり、それで食っているのだと分かれば一概に否定も難しいのだが、かといって、つい口から出た社長の本音に加えて、その後の幹部連中の平社員から搾取する姿勢を見させられると、あの当時ですら既に、際限のない欲望と事業拡大が、人々を却って不幸にしている現実があるのだと、考えずにはいられなかった。

 立ち止まって維持するだけで良ければ、管理権を押さえた場所の利活用などと気障な仕事をやる必要もない。だが現代は、会社をどんどん拡大することが資本主義社会における勝利、いや、むしろ切実な生存戦略であるという時代背景にある。
 すると結局「また欲が出る」などと言う気持ち悪い言葉を平気で口にするような怖い爺さんばかりが祭り上げられ、欲望丸出しで権力を振るいつつ、権限のない若者を追い詰めたり搾取するような構造が出来上がっている。

 この会社は1年半で退職し、その後公務員になったのも、こうした欲望を薪にくべて運営する営利組織に嫌気がさした面もあるかもしれない(もっとも、公務員であっても際限なく欲望を追求する上役はいくらでもいて、その後も振り回され続けることになったが)。

<あらゆる場所が経済戦争に呑み込まれている>


 また別の例になるが、昨今の寺社の運営についても見ていて、同じような違和感を覚えることがある。

 信者や檀家の信仰心を利用して、寺社周辺の清掃や手入れといったボランティア的な活動を外注する寺社がある。信者ではなく、ボランティアは僧侶限定で、見返りとして、階位や功徳を記録とするなどの良心的なところも知っているが、お気持ちだけで、信者や檀家からうまいこと搾取している寺社もあるという批判は時々耳にする(無論、信仰心に基づくものであれば、搾取と決めつけるわけにもいかないが)。

 寺社の掃除などは、昔だったら割と一般的に、信仰が厚く尊いことをしている、周囲のお役にも立っている、などという話で終わる内容だったと思う。
 だが時代の変遷とともに、単なる搾取、詐欺と批判されるほうが当たり前になったように思う。
 背景には色々とあるが、やはり人々が、経済活動を価値観の主軸に置いて、損得や収支を気にするようになった面もあるだろう。
 批判は難しいが、それでも心の通わない、何とも言えず生き辛い、人々の肥大化した欲望の赴いた先の光景にも見える。

次回に続く

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