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読了のおっさん3 白暮のクロニクル(ゆうきまさみ/ビッグコミックスピリッツ)

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。

白暮のクロニクル(ゆうきまさみ/ビッグコミックスピリッツ)
2013年〜2017年 全11巻 完結

① タイプやテーマなど
 現代劇、青年漫画、ミステリー、公務員、厚生労働省、医療、歴史
 吸血鬼、お役所あるある、不老不死、連続殺人、心理、第二次大戦

② 簡単な内容
 現代日本で、オキナガと呼ばれる長命者達(もちろん架空の存在)が暮らしているという設定の物語。オキナガの少年(と言っても10代後半で老化が止まった、実年齢90歳近い不老不死の人物)と、医学の心得がある、厚生労働省の新人職員を中心に、オキナガ達を巡る様々な因縁や過去の出来事、そして次々と発生する殺人などの事件の謎を追いかけて行く。
 物語は時折、少年がオキナガとなった第二次大戦の頃など、過去に遡り、そこで起こった出来事や登場人物との関係から、次々と物語が展開して行く。
 また、物語が進むにつれて、オキナガの秘密が明らかとなって行き、事件の解明や、主人公達の過去の真相へと近づいて行く。

③ 読みどころ
 基本は現代劇であるが、オキナガというファンタジー要素が違和感なく加わっていて、単なるファンタジーよりも、人物や物語にのめり込めると思う。
 現実とファンタジーの接着剤として作用している要素の一つが「厚生労働省」というお役所を通じた政治や政策に関わる描写や背景のように思う。この背景が「お役所あるある」を描写するところとなり、それもまた面白い見どころとなる。
 またオキナガは、厚生労働省に、管理・保護されている言うなれば「被差別者」でもあって、作中の一般人との心理的摩擦もまた、読み応えにつながる。
 オキナガの少年と、厚生労働省の新人職員(女性)が、なんとも言えず良いコンビで、親子、兄弟、友人、同僚、夫婦、そのどれとも言えないような良い塩梅の信頼関係で繋がっており、安心感を伴いつつ歯切れの良い展開が続く。

④  雑多な感想
 作者のゆうきまさみ先生は「パトレイバー」で有名だろうか。パトレイバーでは警察組織の有り様が描かれていたが、本作の厚生労働省の役所の感じ(特に心理面、政治面)は、パトレイバー同様にリアルとも思う。住民との掛け合いや、官僚組織的な仕事の進め方などは読んでいて口角が上がりがち。
 11巻で完結するが、このボリュームがまた丁度良い。1ページの情報量は時折若干多めだが、くどいと感じたことは作品を通して一度もなく、読み始めると最後までどんどん読み進めてしまう。構成がしっかりしているのもそうだが、もし11巻という分量まで計算されているのだとしたら、これはすごいなと思う。
 

⑤ その他
 単なる犯人探し、単なる謎解きという王道ミステリーではなく、怪異やファンタジー要素の氷解とともに物語が展開して行く近代ミステリーというやつだろうか。小説では案外こうした分野は表現しづらいようにも思っていて、やっぱり漫画っていいなと思える作品。
 近くWOWWOWで実写ドラマが放映される模様。作者曰く「実写は無茶」とのことだが、それでも形になったものを見たい気持ちは強い。しかもパトレイバーで後藤隊長を演じていた大林さんが実写出演という、世代の人間にはたまらないサプライズも入っている。おっさんホイホイ。
 有名話題作も良いけど、おっさんはできればこういう作品をもっと発掘したい。紹介してくれた同年代の友人、ナオチャンには感謝したい。
 

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