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読了のおっさん21 21エモン(藤子・F・不二雄/週刊少年サンデー)

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。

21エモン
(藤子・F・不二雄/週刊少年サンデー)
1968年~1981年 全4巻

① タイプやテーマなど
 未来世界、宇宙、宇宙人、ロボット、ホテル、冒険、友情、少年漫画、子供向け、社会風刺、未来予想

② 簡単な内容
 21世紀初頭。宇宙人とのコンタクトを果たした地球は、現代とは比べ物にならない未来都市へと変貌し、宇宙人達にとっての一大観光地となっていた。主人公の少年「つづれや21エモン」は、江戸時代から続く老舗旅館(21エモンの時代ではホテル)の息子。オンボロで廃業寸前のホテルだが、宇宙から来る珍客を独自のサービスでもてなしつつ、さまざまなトラブルに巻き込まれていく。
 21エモンは宇宙への憧れから、将来は宇宙船パイロットを目指している。ホテルの仕事を手伝ったお金を貯め、幾度となく宇宙へと冒険旅行にも出かける。

③ 読みどころ
 未来を空想した漫画作品で、現在において実現しているものも一部登場する。また、テクノロジーだけでなく。ホテルの経営、ロケットの購入、お金持ちで商売敵の友達との比較なども描かれており、ワクワク感と同時に、色々と考えさせられる要素も含まれている。 
 物語は基本1話完結で、一応続いている要素も登場するが、どこから読んでも楽しめる。
 危険な行為や、大規模な爆発シーンも案外出てくるが、とても優しい作風であり、死傷するシーンは存在しない(存在しても冗談で済むような軽傷)。
 宇宙人との交流で文化の違いに困惑したり、地球よりも文明がより進んだ星での体験を描くシーンなどは、非常に簡潔ながらもよく考えられていると思う。

④ 雑多な感想
※以下ややネタバレで注意!




 地球人類はこの先どうあるべきか。なんだか非常に壮大なスケールを含む印象だが、未来を描く中でこうしたメッセージを含まずにはいられないのが、藤子・F・不二雄先生ではないだろうか。同氏の最も有名な作品は、ドラえもんだが、本作は作者自身が最も楽しんだ作品だとも聞いている(ソースはおっさんの遠い記憶なので嘘かもしれないけれど)

 コミカルに書かれているけれども、お金の話がしょっちゅう出てくるのもそれを思わせる。21エモンと友達との会話の中で「自由競争」と言う言葉が出てくる。
 中小企業の21エモンと、巨大一流ホテルの令嬢である友達が、お互いに競い合って商売に励もうという会話が繰り広げられており、現在の行き詰まった資本主義社会を思うと、宇宙人の介入でもないと経済的成長などないのかもしれないなと考えさせられる。

 地球を訪問する宇宙人も様々である。通貨の概念がない宇宙人。物品の授受にかかる文化で「一度あげたものは絶対に返してはいけない。それは最大の恥。」とする宇宙人。本体は植物で、動物を念力で操って活動する宇宙人。色々な宇宙人達との交流もまた、世界の同じ地球人同士のそれと被って見える。

 世界観も面白い。20世紀の終わりに第三次世界大戦が発生している世界線でもある。その中でか、宇宙人の地球への干渉を快く思わない一派の存在も描かれており、たった4巻では書ききれないプロットが多数見られた。
 ドラえもんのように大ヒットしなかったものの、読者や編集の理解を得られてたっぷり描いていればもっと色々な未来世界が見られたように思う。

⑤ その他
 本作はアニメ化されている。1981年に一度と、1991年にもテレビ放映されている。概ねストーリーなどは一緒だが、キャラクターデザインや時間軸などをその時代に合わせて一部修正してある。

 おっさんはこのアニメから入った。子供の頃は実は見なかったのだが、大人になって一挙見してしまう程面白かった。優しい絵とストーリー展開で、基本は子供向けアニメではあるが、知識や人間模様などは結構大人向けである。

 特に実際に読むか見るかしていただきたいのが「ゼロ次元」と言う話である。文明が地球よりも遥かに進歩した星での物語で、人間が徹底的に合理を追い求め、命の概念を書き換えるとこうなるかもしれないと言う予想といったところだろうか。
 この回だけは鳥肌が立ったのを覚えている。

 現代の多くの漫画は、手塚治虫先生に次ぐ、藤子不二雄先生らの黎明期の世代に描かれた作品に大きく影響されていることも分かる。

 地球人と宇宙人がバチバチ争う鬱々としたロボット作品やアメリカ映画はよく見かけるが、本作は宇宙人と地球人が友好的に交流した未来を描かれている。これは単に争うよりもすごく複雑な世界設定だと思うのだが、21エモンを読むと、色々なアイデアや奥行きの広さを感じ、確かに影響されてその世界線の物語を作りたくなってくるように思う。

 とても古い半世紀以上前の作品だが、現代でも通用する。図書館などにも置いてあって気軽に読めるので、大人にも子供にも是非オススメしたい。

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