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読了のおっさん20 よふかしのうた(コトヤマ/週刊少年サンデー)

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。

よふかしのうた
(コトヤマ/週刊少年サンデー)
2019年~2024年 全20巻(執筆時19巻までで誌面では完結済み)

① タイプやテーマなど
 人間関係、感情、恋愛、吸血鬼、夜、ミステリー、記憶、欠損家庭、友情、自分探し、生と死

② 簡単な内容
 主人公の中学生「夜守コウ」は、クラスの女の子から告白を受けるが振ってしまう。そのことで女の子の友人らに絡まれ、学校が嫌になった夜守は不登校となり、
独り夜の街をうろつく中で、吸血鬼の少女「七草ナズナ」と出会う。吸血鬼に恋をすることで吸血鬼になれることを知った夜守は、様々な現実から逃れるため、
自分を変えるために、自ら吸血鬼となるべくナズナとのよふかしを始める。

③ 読みどころ
 人が人を好きになることやその過程。恋愛に限らず人間関係であふれ出る感情。家族問題と恨みつらみ。少年誌の題材としてはとても良い要素が詰まっている。
 それでいて中学生レベルのエロスや冗談で笑わせる展開もあり、比較的重いテーマでありながらも読みやすい作品となっている。
 物語が進むにつれて吸血鬼の秘密が明らかとなってゆき、登場人物たちの過去を追う展開はミステリー要素も含む。
 望まず吸血鬼となったもの、逆に思いがけず吸血鬼にしてしまったもの、吸血鬼であることに思い悩んだり人間に戻る方法を模索するもの、
 様々なキャラクターたちの心の迷いや苦しみが描かれ、主人公らが大人へと近づいていく様は清々しくもある。

④ 雑多な感想
※以下ややネタバレで注意!




 女性キャラが多い(別にけしからんと言っているわけではない)。男性キャラは主人公とその親友の二人ぐらいで、他の男性は脇役か、殆ど出番のない大人
ばかりである。これが青年誌であれば恐らく、もっと色々な年代の男性が出て、その心理の内側が暴かれていく様もあるのかもしれないが、そこは少年誌。
14歳という、ギリギリ子供と言える少年の心情にフォーカスすることで、読者との距離も近く、読みやすく、応援したくなるのではないだろうか。

 吸血鬼との恋愛関係だけではなく、人間同士の友情や恋愛の展開もあり、いきなり男女を意識したアプローチ、なんとなくのナンパ、恋愛ではないけど
友情よりは熱い関係など、恋愛に伴う人の心の多様性が描かれていて、好ましい(好ましいというのは主に年頃の子供に是非読ませたいなという感想)。

 14歳は人によるが、色恋を知るにはまだ早い年齢の可能性もある。作中様々な感情の爆発があって、恋するという感情に近づいていくようにも思う。
また、恋は様々な感情や勘違いから始まるというのも真理で、苦しんだり悩んだり共感したり憧れたりと色々な感情が混じって恋に至るという事実もある。
 登場人物たちの出自や家庭環境がやや荒んでいるのも、そうした混ざりあって完成する感情が渦巻く下地になるからではないだろうか。

⑤ その他
 本作はアニメ化されている。原作を一通り読んでこれならば十分アニメも面白いだろうと思うところである。しかしおっさんは未視聴だが、酷なコメントも多く、
配信停止となにやらきな臭い。。。小学館。 でもタイトルの絵文字はキャッチーでなんだか好き。

 それはさておき、最近は若者の恋愛離れなどとよく言われるが、本作を読むと案外そうでもないのではと思う。男女関係が一昔前よりも、
曖昧でマイルドな関係に移行しているだけで、例えば初めから男女をハッキリと意識して「好き」だの「愛している」だの、お互いに言って恋を確かめるような態度が
なくなっただけではないだろうか(まあ昔だって言わなかったけど)。

 大きな感情を発することがなにかと躊躇われる風潮もあるのかもしれない。同時に恋愛や結婚を経ない事に対する気後れのようなものが今は少なくというのもある。
だが一番大きい理由は、男女として向き合って白黒つけるような関係性が煩わしいという価値観に世の中がなったのではないだろうか。
 失敗すればその後が大変であるし、成功しても恋だの愛だのを示したり維持するのが兎に角面倒くさい。物語でも語られていたが、
それが作られた自分(無理に演じている自分)に対する好意が出発点であるならば尚のこと。

 物語の冒頭で、主人公の夜守コウがいきなり女の子を振るが、そこが非常に現代的であるようにも感じられた。
一昔前だったらとりあえず付き合うか、そこからなんらかの関係がスタートするといった展開になるだろう。または戸惑いつつもあえて格好つけて突き放したり、
逆に照れて鼻の下を伸ばすようなシーンになるのではないだろうか。
それを冷静に「よくわからない」として振るのだから、やはり現代的で、興味を持って読み進めるに足る出だしである。

 人の心とはままならないもので、時代によって価値観も変わる。本作を読んでその一旦でも感じ取れれば、得るものはあると思う。

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