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映画 『蒲団』


 久しぶりに映画館で映画を観た。
『蒲団』
田山花袋の小説を現代の設定に置き換えた映画だった。わたしと田山花袋との出会いは、お笑い芸人のピース又吉直樹さんと音楽家の笹倉慎介さんが2022年に行ったライブで、又吉さんが選んだ二冊の小説をテーマに笹倉さんが曲を作るというものだった。その二冊のうちの一冊が田山花袋の「蒲団」(もう一冊は芥川龍之介の「蜜柑」)だった。又吉さんが小説のあらすじを簡単に説明すると、会場からはどよめき(ほぼ悲鳴)が起こった。それは「蒲団」の内容が

妻子のある小説家のもとに、彼の小説に憧れて弟子入りした女学生。小説家は女学生に対して次第に恋心を抱いていくが、彼女に恋人がいることがわかり激しい嫉妬から彼女を田舎へと帰してしまう。その後、女学生が使っていた部屋で、彼女が使っていた蒲団と夜着に顔をうずめてその匂いを嗅ぐ。

会場のどよめき(ほぼ悲鳴)はおそらく「おじさんが若い女の子の蒲団についた匂いを嗅ぐ」という行為に対してだと思うのだけど、その時わたしが思ったのは、「なにそれ、めっちゃおもしろそう!」。ライブが終わったあと、すぐに検索をすると〈青空文庫〉にあったので、そのまま一気に読んだ。めちゃくちゃおもろいやん。ということがあったので、今回の映画化はとても嬉しかった。設定が現代というところも興味深かったし、どんな風に主人公を描くのかも楽しみだった。結果、すごく良かった。特に女学生とその恋人の描き方が原作よりも現代の若者といった感じで、主人公に対する態度とか言動とかが、年齢的に主人公よりのわたしにとっては「これ言われたらきつー」みたいなことをストレートに言ってくるのとかすごい良い。ラストシーンも良かったな。「えっ⁉︎」ってなって終わるのも原作とはまた違った良さがあって、好き。あとは、なんと言っても主演の斎藤陽一郎さんが素晴らしい。ダサいのよ。情けないし。しょーもない。でもなんか、愛おしい。その絶妙な揺れがたまらなく良かった。

 同じ監督さんが永井荷風の『つゆのあとさき』も同じく現代の設定で映画化しているそうで、それも観にいく予定。こっちはまだ原作読んでいないので、先に映画観てから原作読むのもいいかなと思ってる。楽しみ。


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