【読書感想文】奥本大三郎「現代のファーブルが語る自伝エッセイ 蝶の唆え」

はじめに

こんにちは!コヌズメと申します。
本書にはなかなか苦労しました。背伸びは良くないですね、転びそうになります。

とはいえあったかい感情にもなれました。子供時代っていいなって。

以下、感想文です。是非最後までお読みください。

タイトル「聳え立つ壁を透かして」 

 私は現在、大学に通っています。
 大学生というのは一般的に20歳前後で、私も例外ではありません。平成生まれの平成育ち。その私が、1944年生まれの少年時代が綴られた本を読むわけですから、当然、ジェネレーションギャップが生じてきます。

 さらに、著者の教養の広いこと!本書では、私の知らない時代の知らない人の作品や出来事が、著者のエピソードとともにたくさん紹介されています。最初はメモを取っていたものの、あまりの情報量ににっちもさっちもいかなくなって、結局わからないことは適当に流して読むことにしました(泣)。

 著者との年代の隔たりと自分の教養不足。これが本書を読んで最も強く感じたことです。読書を楽しむ上では、知識不足を補うためのキチっとした勉強も重要ですね。今の私には、この本はちょっとヘビーでした。

 しかし、全然楽しめなかったのかといえば、そんなことはありません。

 不思議なもので、時代は違っても、幼少期の体験にはどこか通じるものがあります。小学生のころの著者がせっかく捕まえたギンヤンマを逃してしまったエピソードなど、「あぁ~子どもぉ~」という、万病に効く感情が芽生えます。子どものころ周りの大人が自分を見てニヤニヤしているのが嫌でしたが、あれは不可抗力だったのだなと、いまならわかるというものです。子供のヘマ、最高。

 著者の原体験が語られ、それが頭の中で精細な映像になるのに呼応して、私の少年時代も蘇るような、そんな読書体験でもありました。

 自伝の面白さは、著者と自分との間に、差異と一致を見出す面白さだと、私は考えます。今回、著者と私との間の差異はたしかに大きく、さながら聳え立つ壁でした。しかし、共有できるものもありました。私にはそのことが、なによりうれしく思われます。

著書紹介

「現代のファーブルが語る自伝エッセイ 蝶の唆え」
奥本大三郎
2020年4月22日 初版発行、 小学館

フランス文学者であり「完訳 ファーブル昆虫記」を著した奥本大三郎氏の、主に小学生時代を語った自伝エッセイです。ちなみに「唆え」は、「おしえ」とルビがふられています。


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