ウルトラセブンに登場した操演怪獣・宇宙人
ウルトラシリーズではアクターを使わない操演の怪獣・宇宙人というのが登場することがあります。
しかし、実際にウルトラヒーロー達と戦ったのはウルトラセブンが最初でした。
操演怪獣はウルトラQの頃から登場はしていましたが、何気に初代ウルトラマンは操演の怪獣とは戦う機会が無かったんですね。
ただ、それでもネロンガやゴモラなど、長い尻尾のある怪獣は尻尾を操演で動かしていたので全く皆無という訳でもありませんでした。
セブンでもエレキングや恐竜戦車、リッガーといった怪獣たちは長い尻尾を操演で表現していますが、ウルトラヒーローが操演オンリーの敵と対決するのは、やはりセブンからが全ての始まりだったのです。
クール星人
記念すべき第1話で登場した敵こそが、操演宇宙人の第一号だったんですね。
ただ、クール星人は巨大化せずウルトラセブンと出合い頭に瞬殺されてしまうため、インパクトはかなり弱いです。
その戦闘時間、僅か5秒未満! シリーズ最速記録というある意味伝説を築いています。
セブンの第1話は内容的には番組のアピールポイントを紹介するようなダイジェスト的な要素がとても多くて、セブンvsクール星人との対決にまで気が回らなかった印象があります。
あと、セブンの放送開始日は10月の頭になっていますが、当初の予定はもう2週先でした。ところが、前番組の『キャプテンウルトラ』が諸事情で話数が短縮されてしまったため、放送日が繰り上がってしまったのです。
その煽りを受けて、急いで第1話を完成させなければならなかったので、クール星人との対決は作れなかったのだと思われます。
時間に余裕があれば、巨大化して岩山での格闘戦かセブンの飛び人形を使っての空中戦が実現していたかもしれません。
ワイアール星人
本来のワイアール星人は二足歩行タイプなのですが、劇中では度々一本の長い蛇のような蔓の姿になっていることが多いです。
公式設定ではワイアール星人の全長は150mということですが、恐らくこの蔓形態の長さを表しているのだと思います。
この種の操演はウルトラマンに登場した怪奇植物スフランの技術が活かされているようにも見受けられます。
結果として二つの姿を持つインパクトの強い宇宙人でした。
実は台本ではウルトラセブンとの対決でも蔓形態になって巻きつくという展開がありましたが、本編ではその場面はカットされて呆気なく決着がつきました。
恐らく、次の3話に登場する尻尾を巻きつけるエレキングとダブってしまうためだと思われます。
ですが、巻きつくのではなく他の攻撃手段(例えば鞭とか)として体の一部を使っての攻撃をしてくれば、そこそこ盛り上がるバトルになったのではないでしょうか。
ビラ星人
本格的に巨大化したウルトラセブンと戦った操演宇宙人としてはこのビラ星人が最初になります。
第1話と同時制作だったため、クール星人共々前作のウルトラマンとは新機軸を打ち出そうとしていたのがよく分かります。
実際の戦闘時間こそ40秒足らずと短いのですが、戦闘シーン自体はセブンに派手に投げられたり、逆に操演ならではの奇抜な体を活かしたキックをしたりと、操演オンリーの宇宙人戦ではこのビラ星人が最高傑作と言えるでしょう。
ただその反面、このエピソードは特撮に偏重したためか本編ドラマに関しては完成度が低いものになってしまいました……。
チブル星人
3体目の操演オンリー宇宙人ですが、クール星人と同じく巨大化での戦闘ではありません。
瞬殺だったクール星人よりも多少はセブンに積極的に立ち向かってるのでちょっとマシですが、やはり弱いことに変わりありません。
台本上でも「戦う力などない」と明言されていて、ザコ扱いというある意味悲しい宇宙人でした。
よって、チブル星人との対決そのものは面白味が無いのですが、私はむしろこのチブル星人との戦いに、一つの可能性があったと思うのです。
それは星人との戦いの最中に2回挿入されるこのカット。
このカットではチブル星人が操るオモチャの戦車が迫ってきているというのを示唆しています。
なので、星人本人との戦いよりも星人が呼び寄せたオモチャ軍団がセブンにも襲い掛かって来る、というシチュエーションもできたと思うんですね。
セブンが子供のオモチャを壊すというのも印象が悪くなるかもしれませんが、防衛隊の戦闘機や戦車が怪獣に攻撃を仕掛ける場面が、セブンに切り替わった程度で反撃しないように配慮すれば、派手な特撮シーンになっていたかもしれません。
偶然ではありますが、このオモチャ軍団も操演の敵ということになります。
ナース
円盤に竜と二つの形態に変形できるロボット怪獣です。
ヘビ型の操演怪獣というと、ウルトラQの怪竜やその原型となった東宝映画のマンダという怪獣がいます。
セブンは戦闘中に宇宙人以外にも円盤と直接戦う場面がちょくちょくあるのですが、本格的に戦うのはこのナースが初です。
何気にウルトラセブンではキングジョーよりも先に登場したロボットでもありますね。
色々とセブンでは初な要素が多いんですね。
ただ、このナースの操演や見せ方についてははっきり言って「イマイチ」でした。
デザインや円盤に変形するのは良いんですが、竜形態の動きがメチャクチャに激しく動かしているので、とても安っぽく見えてしまうのです。
円盤形態にしろセブンの周りをグルグル回るだけでセブンが目を回すというだけなので、迫力はちっとも感じられませんでした。
円盤のナースが体当たりでセブンを吹き飛ばす
円盤ナースの光線でセブンを攻撃
竜形態は尻尾のアップを利用してセブンを尻尾で攻撃する
といったようなアクションでも見せてもらえれば、結構インパクトはあったかもしれません。
なお、この回と同時制作でもあったチブル星人の回の特撮を担当したのは的場徹さんという方で、ウルトラQから参加しているベテラン監督なのですが、ウルトラセブン初期に担当した特撮はどれもイマイチなものでした。
的場さんはウルトラマンでは最初期の3話までしか参加しておらず、それからしばらくは同じ円谷プロの『快獣ブースカ』の特撮をメインにしてとても長いブランクがありました。
その影響もあって、セブンの初期はどこかパッとしない出来になったのではと思われます。
グモンガ
セブンと戦うことのない等身大の操演怪獣も登場します。
ウルトラ警備隊に倒されるザコ敵役なのですが、クモらしい操演の動きやガスを噴射するギミックは見事な物でした。
この回を担当した円谷一監督はウルトラQで、同じく等身大の巨大グモの怪物が登場するエピソード『クモ男爵』を担当なさっていました。
このグモンガの操演も、その時のノウハウが活かされていることがうかがえます。
アイアンロックス
元々このアイアンロックスは操演の戦艦ではなく、ウルトラマンのドドンゴやペスターのように二人の役者が入って動かす着ぐるみのロボット怪獣になるはずでした。
台本では四本足で歩いて上陸するというシーンもあったのですが、予算の関係もあって操演オンリーに変更されています。
アイアンロックスは大量の大砲を装備しているので、艦砲射撃が最大の見物なのですが、逆を言うと見所はそこまでといった所です。
ウルトラマンでは『動かない敵』としてブルトンがいるのですが、動かない敵ならではの工夫で見せ場を作っていました。
しかし、このアイアンロックスの方はその工夫があまり活かせていなかったように思われます。
セブンを鎖で捕まえるというのはまだ良いのですが、この回はシナリオと特撮が噛み合っていないという致命的な欠点もあり、セブンの一人芝居だけでは盛り上がりも薄いものです。
この動かない敵とどう戦って演出するのか、という答えが36話に登場するペガ星人との戦いで出されています。
ガブラ
このガブラも操演の演出と工夫が見られるユニークな怪獣でした。
本来は四足歩行型の普通の怪獣で、セブンとの格闘自体は短く呆気なく終わるのですが、驚くべきはアイスラッガーで斬り落とした首が飛び回ることなんです!
このエピソードは日本の怪談をモチーフにしているとされ、ガブラの首が飛び回って襲って来るのも舞首という妖怪が参考にされている可能性があります。
こうした意外性の演出を出すことができるのが、操演の魅力と持ち味の一つなのだとよくわかりますね。
ポール星人
この宇宙人はドラマの演出みたいなものなので、操演でありながらセブンとの戦闘もなければ警備隊と戦うこともない非常に特殊な操演キャラクターです。
ウルトラセブンにおいて操演オンリーで戦う宇宙人は前半に集中しています。
何しろ操演は着ぐるみと違って手間も時間もかかりますので……。
ただ、戦う機会こそ無くても操演だからこそポール星人のような普通の完全に人型の宇宙人とは違った個性のあるキャラクターとしての印象を残すことができるんですね。
ギエロン星獣
有名なギエロン星獣ですが、決して操演と無関係ではありません。
翼があって空を飛べる怪獣は、操演によって着ぐるみのままでも浮遊するという演出が取れます。
ギエロン星獣も1シーンながら、地上で浮くシーンがあるのです。
ウルトラマンでもドラコといった翼のある怪獣などが操演によって着ぐるみのまま飛んだりしていますので、翼のある怪獣というのはそれだけでも操演を活かすことができる長所があるんですね。
恐竜戦車
本物の戦車の上に怪獣が乗っているだけという、物凄いインパクトのあるロボット怪獣です。
番組の予算不足によって映画から借りた戦車の模型を使って生み出された訳ですが、実に大胆としか言えません。
着ぐるみの四足怪獣と合体して生まれたこの怪獣ですが、戦車部分がラジコンの操演になっていて、結構リアルに動きます。
とはいえ、完全にリモコンという訳でなく、一部のシーンではワイヤーで引っ張ってるのが見えているのですが……。
この恐竜戦車を最後に、ウルトラセブンからは大規模な操演メインの怪獣は姿をほとんど消していくことになります。
プラチク星人
プラチク星人自体は着ぐるみの宇宙人なんですが、ガブラと同じく一度倒された後にまた襲って来るという意外性のある演出でした。
骨だけの怪獣というとウルトラマンでは着ぐるみとしてシーボーズがいますが、100%骨だけの姿という演出は操演でなければ不可能な要素です。
ダリー
このダリーも着ぐるみではあるのですが、所々に『元は操演怪獣だったのでは?』と匂わせる要素があるんですね。
腹に足がいっぱいあるデザインや、壁に張り付いているシーンなどは明らかにリモコンによって動かされています。
しかもそれ以外の着ぐるみで演じているシーンでも部分的にではありますが、いっぱいある足が明らかにギミックで動いており、役者と操演の融合とも言うべき演出が目につきました。
ペガ星人
さて、アイアンロックスで記した『動かない敵』との戦いの演出の答えが、このペガ星人の円盤になります。
星人自体は円盤の中から出てこない代わりに、この円盤との戦いは飛び道具同士による弾幕合戦というものでした。
本来ならこんな円盤などセブンなら一発で倒せてしまえる、という固定観念を打ち破る演出で、意外に苦戦するという見せ場をしっかり作ることができました。
演出が物足りなかったアイアンロックスも動けない分、飛び道具同士の対決をすれば、ペガ星人みたいに盛り上がった可能性があります。
ちなみにこの円盤との対決は台本には存在しないもので、撮影現場のアイデアによって作られたものでした。
まさしく現場の発想と工夫の勝利と言えるでしょう。
クレージーゴン
クレージーゴンも着ぐるみではありますが、ダリーと同じく操演の要素も混じったロボット怪獣でした。
右手の巨大なアームがそれになっており、尻尾のある怪獣の尾を動かすのと同じ要領で動かしています。
こうしたアンバランスな独特なデザインで演出することができるのも、操演ならではの強みと言えるでしょう。
無論、着ぐるみのアクターとは動きを合わせないといけないので大変でしょうが……。
あとがき
以上のように、ウルトラセブンに登場する怪獣や宇宙人はかなり操演を活用して演出や工夫がされているのがとても多かった訳ですね。
現代ではCGとかで簡単に済ませられるものですが、リアリティのある動きは操演ならではの大変見栄えのある貴重な演出と技術です。
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