『笑う月』を思い出す
大学4年の時だと思う読んだのは。安部公房の『笑う月』。笑う月が追いかけてくる夢で、恐怖というものは現実よりも想像の方が怖いというような内容のエッセイだったと記憶している。
小さい女の子を連れていたと思う。
よく見る保育園の前に来た。
あ、うちの娘もここに通っていたんですよ。
いっしょにいる大人に話しかけた。
その前を通り過ぎる。
保育園を右手に、左手には暴力団の事務所。
数十センチの低い杭が等間隔に並び、その杭の上の方を通して縄が張られ、境界となっている。
事務所の方に入ろうとすると、複数の猿がこちらを向いた。
ニホンザルというより、なんとかヒヒのほうが近い。
小さい女の子は事務所の方に向かった。
猿は私の方に向かってきた。
ボス格のような猿がどんどん近づいてくる。
当初、私は笑みを浮かべながら後ずさった。
追いつくわけがない。
空中を少しずつ浮遊しながら、エビのような姿勢で、しかしゆっくり、ゆっくり交代する。
どんどん距離が縮まってくる。
え?
このままでは追いつかれる。
心臓が高鳴り、顔はこわばり、恐怖が増幅していく。
目覚めたら息切れしていた。
そのあともう一度寝た。目覚めたときには、同い年の息子は元気だった。
Amazonに飛んだら『笑う月』じたいは、短編集のようだ。対談か何かで『笑う月』のことを語っていたものを大学生の時に読んだのかもしれない。
人の夢のごとく、記憶が儚い。
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