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【#マーケティングトレース】 サーティワン アイスクリーム

こんすけです。本日はサーティーワンアイスクリームを#マーケティングトレースしたいと思います。この会社をテーマにした理由は、先週末に約20年ぶりにサーティワンを食べたからです。

サーティワン アイスクリームについて

さて、まずはサーティーワン アイスクリームについて紹介します。日本で最も店舗数の多いあの有名なアイスクリームチェーンですね。皆さんも一度は口にしたことがあるのでないでしょうか?

会社の正式名称は「B-R サーティワン アイスクリーム株式会社」です。
1945年、バートン・バスキンとアーヴィン・ロビンスという二人の起業家が南カリフォルニアにアイスクリーム専門店を開きました。そのコンセプトはとてもユニークなアイデアがあり、1ヶ月(31日間)毎日別のアイスクリームの味を出すというもの。そこからサーティーワンの歴史は始まり、今では世界52か国以上で8,000店舗を展開し、毎年3億人ものお客様がサーティーワンのアイスクリームを食べているそうです。

↓左がバートン・バスキン氏 右がアーヴィン・ロビンズ氏。二人の名前を取って、B-R サーティワン アイスクリーム株式会社と名付けられています。

サーティーワンの特徴と言えば、なんといっても「フレーバーの数」ですよね。定番のフレーバーで21種類、限定フレーバーで11種類を常にラインナップしており、1か月毎日食べても違う味が楽しめるエンターテイメント性があります。今までに発売したフレーバー数は、なんと1,300種類以上!10種類ほどしかないコンビニアイスの冷凍庫前でも悩んでしまう筆者にとっては、途方に暮れる数です。。。

またサーティーワンアイスクリームは、じつは31種類ではなく、32種類そろえているそうです。理由は店頭にあるアイスクリームを収容する冷蔵ボックスが、前後に2列、横に16列の計32個という配置になっているため。今度お店に行った際に、ぜひ数えてみてください。ちなみに全32種類買うとこんな感じになります。

マーケティングトレースシートで分析

さてここからは、マーケティングトレースシートを見ながら、様々な視点から事業分析をしていきたいと思います。

①外部環境(PEST分析)

社会(society)面から見てみると、近年の猛暑影響や、「アイスクリーム=クールダウン」という機能面だけでなく、スイーツとしてのポジションを確立しつつあり、通年アイスクリームを食べる文化が定着してきたこともあり、市場は拡大傾向にあります。2019年時点で市場規模は5,151億円。だいたい、コンビニおにぎり市場(約5,000億円)と同じくらいであり、我々の生活に密接な関係があることがわかるかと思います。やっぱりアイス、食べますよね。

↓こちらはアイスクリーム市場の成長推移です。

また技術(Technology)面で見ると、コンビニ大手のPB(プライベートブランド)商品などを中心に、各社の企業努力により製品クオリティが上がっていると言われています。ちょっと高くても、ついPBのプレミアムなアイスクリームに目が行ってしまいますね。メーカー×コンビニがアイスクリーム市場の成長をけん引していると言っても過言ではありません。

また一時期、大ブームを巻き起こした「コールド・ストーン」をはじめ、味に加えて"演出"にも工夫をする事業社が登場しました。アイスクリームは提供されてから食べる瞬間までの"食のエンターテイメント"に進化したと言えるのではないでしょうか。

②競合の定義(5Force分析)/④ポジショニング

業界競合は、コンビニ大手3社/コールド・ストーンなどが挙げられます。ポジショニングは以下のように整理しました。

サーティーワン アイスクリームは、32種類のアイスが選べるというエンターテイメント性の高さと、300円から楽しめるリーズナブルな価格設計がストロングポイントと分析しました。競合としては、大手コンビニ3社が価格帯の幅を広げることで業界シェアを大きく取ろうとしている動きが見られます。

③ターゲティング・重点顧客/⑤マーケティングミックス(4P)

ターゲティングについては、郊外エリアに住む高校生・ファミリー層が中心となります。大型ショッピングセンターなどへの出店を積極的に行い、上記ターゲットの獲得を推進しています。

またマーケティングミックスを見ると、特徴的なのがプロモーションの部分に大きく投資しているようです。消費者を飽きさせない"フレーバー数の多様性"が強みであるため、商品開発専用のラボを自社に構え、日々商品開発に取り組んでいます。食感や色合いなど、お客様の目を引く独自メソッドがあるようです。


なおフレーバー研究については、日本発案のフレーバーが本国アメリカで採用されることもあるそう。個人的に外資企業はトップダウンのイメージが強かったので、ボトムアップの仕組みがあるのは面白いと思いました。

また近年は有名キャラクターとのタイアップにも積極投資をしています。ターゲットとの親和性を考えると、キャラクターファンの獲得は有効なマーケティング手法だと思います。(コストはさておき)

⑥トレース企業の成功要因

成功要因は、FC(フランチャイズ)戦略を上手く使っていることがポイントと考えます。
まずはFC戦略についてのおさらいです。『社団法人日本フランチャイズチェーン協会(JFA)』によれば、フランチャイズは以下のように定義されます。

『消費者ニーズにあった商品・サービスを提供する事を最終目的として、フランチャイザー(本部)が、フランチャイジー(加盟店)との間で契約を結び、自己の商標やサービスマークなどを使用させて、同一のイメージのもとに事業を行う権利を与えるとともに、経営に関する指導を行い、場合によっては、継続的にフランチャイジーに商品(サービス、原材料を含む)を供給し、これらの対価として、フランチャイジーが加盟金、保証金、ロイヤルティ(本部への定期的納入金)などを支払い、本部と加盟店とが共同して事業を進める』

少しかみ砕いて言うと、フランチャイズとは「本部と加盟店がお互いに経営ノウハウ・資本・人材・モノを交換し合う仕組み」です。そしてその仕組みの目的は、双方の企業が成長するというところにあります。この「双方の企業が成長する」というポイントを大切にしていることが、これだけの成長に繋がっています。

バブル崩壊後に見直したFC経営のあり方

ここで少し時代をさかのぼります。日本の経済成長と共にアイスクリーム市場は大きく成長を遂げ、その先頭を走っていたのがサーティーワン アイスクリームでした。
しかし、バブル崩壊とともにアイスクリーム流行も終わり、1998年にはピーク時の半分、営業利益率は20%から1.6%まで落ち込んでしまいました。
消費者からのイメージ調査では、「店舗が古い」「汚い」「サービスの演出がない」。FCオーナーからは「本部がロイヤリティを取りすぎだ」。アメリカ本社からは「売れないなら広告費削減しろ」という状況で追い込まれていたそうです。図解するとこのような状況です。

当時サーティーワンのトップだった松山会長は、この状況からボトルネックとなっているのはFCオーナーとの関係性と判断しました。当時、本部はFCオーナーへ商品を卸すだけで明確な経営サポートもなく、売上利益の大半をロイヤリティとして献上させるという構図になっており、本部とFCオーナーは対立関係にあったそうです。この関係を改善することを最優先事項とし、下記のような取り組みを推進しました。

■本部へのロイヤリティの見直し
■店舗改装費の本部負担
■コスト捻出を目的とした本部体制の見直し(オフィス、業務内容など)

その結果、FCオーナーとの関係改善が見られ、さらなる規模拡大につながったと言われてます。テコ入れすべきポイントを明確に見極めた好事例です。

⑧もしも自分がサーティーワン アイスクリームのCMOなら

この現状を踏まえて、もしも自分がサーティーワン アイスクリームのCMOだったら、どのようなマーケティング戦略を組むか想像したいと思います。ずばり、D2C戦略の強化です。

これまでのFC戦略が功を奏し、1,100店舗以上の販売店ネットワークは強力なものの、近年アイスクリーム業界で成長を遂げているコンビニ大手3社(約58,000店舗)と比較すると大きく見落とりします。さらに、コロナ影響で外出自粛が進む中で、実店舗の拡大はコスト的にも採算が合わない可能性が高いと考えます。

このトレンドを加味して、顧客に直接アイスクリームを届けるスキームを構築すると、新たな可能性が見えてくるのではないかと考えます。例えば、キリンビールが推進しているホームタップのようなモデルイメージです。

ホームタップとは、家庭専用ビールサーバーサービスで、キリンビールの工場から直接、つくりたてのビールが定期便で送られてくるサービスです。月額基本料2,900円+ビール4リットル4,600円で、1杯あたり625円と非常に高額商品ですが、申込に対して生産が追い付かないほどヒット商品となっています。

ホームタップがヒットする要因は、毎月高品質なビールが送られてくる"プレミアム感”と、インテリアとしても美しいビールサーバーを持てる"所有欲"を満たしているからだと推測しています。またメーカー側からしても、商品振れ域から消費者の声をダイレクトに捉える事ができますし、今後5G環境が整ってくればIOTとしての機能も期待できるかもしれません。(ビールの残量が少なくなったらレコメンド情報を流すなど)

アイスクリームも保管環境さえあれば、賞味期限が長い商材ですし、自宅でみずから専用スクープでアイスをすくって食べる"エンターテイメント性"も付加価値として提供できるのではないかと考えます。

ちなみに専用スクープでアイスクリームを丸く形作って救うのは、熟練のスキルがいるようです。アイスクリームの世界は広いですね。代表的な技をご紹介しますね。

いかがでしょうか?ご意見、感想などいただけると大変うれしいです!
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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