4.非合理的なMaaSとしてのPokémon GO
これまで特にMaaSについて詳しく言及してきませんでしたが、改めて定義を確認すべく、総務省のページを引用させていただきたいと思います。
MaaS とは Mobility as a Service の略称で、「移動のサービス化」が直訳かと思われます。バスや電車などの公共交通機関を手元のスマートフォン等から検索から予約、支払を一度に行えるように改めて、ユーザーの利便性を大幅に高めたり、また移動の効率化により都市部での交通渋滞や環境問題、地方での交通弱者対策などの問題の解決に役立てようとする考え方の上に立っているサービスとなっています。
これだけ聞くとMaaSの目的はやはり『合理的な移動』の提供だと考えられます。そこにはどんな交通弱者の人に対してでも無駄なく最適化された移動を提供できるよう追求しようと心がけているのではないかなと思います。
これに関して良い悪いかで言えば当然良いと答える人が圧倒的に多いと思います。僕もこのMaaSというサービスには大きく期待していますし、これからの発展に興味津々です。
将来、家から一歩出たら目の前にバスが居て、目的の場所へ辿り着き、用事が済んだら行きと同じようにスムーズに家へ帰ることが出来る。必要なものはアマゾンで配達してもらったり、e-Paletteで試しばきしたりジムを呼んだりも出来ます。とても便利で素晴らしいと思います。一方で外へ出る理由がどんどん少なくなったり、どこかへ意味もなく寄り道することもなくなってしまうのではないかと思いました。そんな未来は少々無機質でもあるのかなあとも感じてしまいました。
ヒューマンインターフェースを学んでいくうちに出会った不便益という概念と少し違うかもしれませんが、非合理的な移動の提供を促す Pokémon GO みたいなサービスがこれからどんどん需要が増していくのではないか?と感じます。
記事の中で印象に残った箇所を引用します。
『Ingressを通じて、長年住んでいた自宅の近くに大きな大仏があることを知ったユーザーがいた。また、Pokemon GOで渋谷に水ポケモンがよく出るのでユーザーが調べたところ、地下に水路があることが分かった』
『「Adventures on foot with others」(みんなと歩いて行ける冒険)です。本当は世界は偉大なのに、我々はそれを忘れてしまっているんじゃないか、という危機感がありました。
(ハンケ氏がかつてグーグルで関わった)「Google マップ」「ストリートビュー」は、その場にいなくても、気になる場所の様子が分かるものでした。これはいわば「VR(仮想現実)的」です。しかし、そうしたアプローチでは、現実世界で我々が体験している「解像度」になかなかたどり着きません。ならば、現実の場所に実際に足を運んでもらうきっかけとなるテクノロジーを作りたい、と考えました。「(位置情報の技術を)AR的に使いたい」と考えたんです。』
『ARの体験とは「現実にレイヤーを重ねること」であり、実際にはそこにはないにも関わらず、現実のものとして知覚できることが大切です。それは何も、「現実世界にCGのキャラクターが重なっている」ことだけを指しているのではありません。
ポケモンGOやイングレスには、「ポケストップ」や「ポータル」というものがあります。例えば、現実世界の「灯台」がポケストップになれば、地図上の灯台にゲームの中からのみ分かる情報が付加されます。結果、その灯台はただの灯台ではなくなります。ポケストップやポータルになることで「そこに行ってみたくなる価値」が生まれるのです。
Nianticは、現実世界の偉大さの力を貸してもらい、そこに実際に(屋外に)足を運んでもらえるように「背中を押す」役割を果たせるよう、力を注いでいます。
我々の中にはゲームを作るDNAはありますが、メンバーのほとんどはゲームを専門的に作ってきた人間ではありません。ですが、ビジョンは明確です。ゲームの力を活用し、人々に「外に出てほしい」と考えました。そのために必要な規模を持つ技術を開発してきたのです。』
現実世界で特に気にも留めてなかった場所や建物がアプリの中では意味あるスポットになり、実際に足を運ぶ理由になっている。ゲームをきっかけに現実世界が違った風に見えるようになり、新しい発見があり、街としての価値が向上するかもしれません。もしかしたら、現実世界の価値(例えば地価や建築価値0のレガシーなど)が仮想世界の価値によって変動するなんて日がくるのかもしれないですね。こういった人々の行動を促進させ、実際に移動させたくなる非合理的なMaaSもどんどん出てきてほしいです。実際にNianticは位置ゲーの情報技術をプラットフォームとしてサードパーティに提供したいと考えているらしいので、ゲームだけでなく本当に実用的なアプリとかが今後誕生するかもしれませんね。とにかく楽しみです。
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