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芸能人の苦労あじわいごっこ
田舎の音楽イベントへ行った。毎月行われていて、出演者も観客も知った顔ばかり。
少し遅れていくと、満席だった。入り口付近で立っていると、1列目に席を追加してくれた。演奏者の顔が、シワまで見えた。
数分後、演奏者が変わる。とても好きにはなれない音楽の演奏が始まった。
でもここは最前列。ワイプに抜かれる芸能人を気取って、ニコニコしてみる。でもすぐに背中が丸くなり、にらんでいるくらいの表情で見てしまう。
あぁ、石原さとみだったら絶対こんな顔して聞かない。わー!すごーい👏ってリズムをとりながら聴くはずだ。そう思うとやっぱり、芸能人ってすごい。特に紅白の審査員。わたしはこの一曲で「トイレ行こうかな」と考えているのに。ニコニコし続けて、時に感想を求められることもある。
ようやく、永遠のように感じた15分が終わって次のアーティストに。曲も英語だし、バラードが甘くて、歌い手は若いしかわいい。美しすぎて、過去を思い出させるような哀愁が漂う。隣の席の子は、曲を聴きながら泣いていたと思う。
こんなとき、誰かを思い出すような顔をして聞くのは、芸能人だったらアリなのだろうか。石原さとみが「誰かを想ってる顔」みたいような気もする。
でもたとえば石原さとみとかがベビーメタルとかで頭を振ってるのは違うし、男性アイドルが女性アイドルの曲を完コピしてたらきっとネットで叩かれるし。
かと言ってムッとしてても、注目を集めてしまうだろうし。下手にリズムを取ってリズム感ないなぁなんて思われてもイヤだし。
でも踊りたいから「あ、わたしは気にする必要ないんだった!」と踊る。周りの目を気にせずに済むことを、ありがたく思いながらノンアルコールビールを飲む。目の前で演奏しているおじさんと目が合った。
妄想に勤しんでいて、全然曲を聴いてなかったの、バレてたかしら。
お返しの愛は無限大、一緒に幸せに貪欲になりましょうね!!