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どこかの誰かの物語り、妄想を添えて。

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ありそうでなさそうな、なさそうでありそうな、どこかの誰かの物語り。
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#あの夏に乾杯

わたしの知らないあなた

わたしの知らないあなた

「こいつはコク派やん」
「でも親父さんは辛口派やからさ」

あの春の日から16年間、毎年恒例になった光景が目の前にある。

「集金、集金。一人500円なー」

一ミリもお酒が飲めないわたしも、集金係の彼に500円硬貨を渡す。

「ごめんね?」
「いや、謝るところじゃないし。全然気にしてない。てか疑問形?」

500円硬貨を受け取りながら彼が笑う。それにつられてわたしも笑う。

「俺らが知り合った頃

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