閑話休題3 気高きジルは 待っていてくれたんだ①

じゃあ〜、、、 

しゃがれた声でジルが髪を引っ張る。

遅い朝の習慣だ。

おもむろに起き、

ジルに朝ごはんをあげる

ジルは♂のシャム、

贅肉のないスリムなからだで、

しなやかに高いお気に入りの場所に

舞い降りた。

ただ、もともと腎臓が弱かった。

ジルちゃ〜〜ん、

と呼ぶと必ず反応してくれた。

ジルはわたしのある周波数の、

甲高い声に特に反応した。

当時、フリーランスのライターだった

わたしはよくワープロにかじりついて

文章をつむぎだしていた。

時に、かなり硬派な長文の依頼がある。

文章を書く時は飲み物しか取らない。

固形物は消化のために

胃に血液がいってしまうからね。

そんなある日、締切迫るそんな長文記事

を鬼気迫る感じで仕上げていた。

翌日が締切だった。

フォンとジルがワープロの横の

窮屈なスペースに舞い降りた。

ジャマだよ、とジルをはねのける。

また舞い降りる、はねのける、

何回かの攻防の後、

ついに切れたわたしは

「ジャマだから、

書かなきゃならないから!どいて!」

強くジルを払い落とした後、

強制終了となった腹立たしさから、

〈もう、飼いたくない!〉

とココロの中で、つぶやいた

その時、ふいに、

線香の匂いが鼻をついた。

そして、

〈飼っちゃらなあかん、

飼っちゃらなあかん〉と、

二度、頭の中で響いた。

わたしが思ってる??なぜ?

おかしい、

わたしは飼いたくない、って、

怒っているのに……

嗚呼、あの頭の中で響いた言葉、思いは

わたしじゃない、

たぶん、だいぶ前に亡くなった

おばあちゃんからの、

メッセージだったんだ、、

とやっと気づいた。

つづく

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