【創作】救われたいのは

「ただ死ぬんじゃ迷惑なだけだし、誰かを庇うとかさ、ヒーローになって死にたいんだよね。」

そういった彼女の視線は、どこか遠くを見ながら揺れていた。

それが私には、まるで自分がヒーローになるのにお誂え向きの悲劇を探しているように見えた。

周りの言うことは当てにならないと、渡した愛を全て踏みつけ、知らない人からの罵声を真実だと手放さない。

あなたに傷つけられている私のことを先に救ってくれないかな、なんて思ったことは顔に出さなかった。

誰かを救って自分は死ぬなんて望んでないくせに、本当に救われたいのは誰なの、と思わず言いかけたが、喧嘩になったら面倒なので曖昧な相槌で済ませた。

なんかもう終わりかもしれないな、とふと思った。

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