【詩】梅酒
昔々あるところに
あなたとわたしがおりました
今となっては昔のこと
あなたとわたしがおりました
ある日あなたはこう言いました
「君とは今日で最後だ」と
わたしはあなたに言いました
「それなら梅を取りに行きたい」
雲一つない空の下
二人で梅をもぎました
朝になると言われた通り
あなたは隣にいませんでした
わたしは顔を洗い終わると
大きな壺を取り出しました
昨日の梅をただひたすらに
壺に詰めては泣きました
あなたと過ごした日々と梅
氷砂糖とお酒を入れて
少し入ってしまった涙も
きっと深みを出すでしょう
出来た頃には涙は止まり
笑って過ごせているはずだから
梅酒の中の記憶も全部
飲み干すことができるでしょう
昔々あるところに
たしかに二人はおりました
今となっては昔のこと
梅酒が美味しく出来ますように
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