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追慕


いつか消化できるように取っておいた文章はもう期限が切れた。あの頃の自分は死んだ。最後までとっておこうとしたけれど、それももう必要ない。先が見える。
ここでおわる。


あの頃の私


残っていたのは


蝉の抜け殻すっからかん

何にも詰まっていなかった

誰かにかけた言葉も日々の積み重ねも

何にも詰まっていなかった


愛していたはずの者たちも

何にも詰まっていなかった


隣の子の顔

塗りつぶされた写真

今だったその頃は鮮やかだったはずなのに

いつしか生臭い強烈な今に色を盗られてしまったみたいだ


思い出せないあの頃を蔑ろにしたら

過去の積み重ねが消えてしまいそうで


私が消えてしまいそうで


私今本当にここにいるの?


あの頃を思い出そうとしても

この生臭さが曖昧にしていく


大人になるってこんな感じなのかな


あの頃に戻りたい

誰かの為に生きていたい

自分自身の選択なんてしたくない

そうやって自分に背中を向けては

踏み出すこともできないままで


1人逃げ続けるままで





それでも





今が私の全てだ


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