自分の本能にブレーキを『FACT FULNESS』(ハンス・ロスリング)
13問中、1問正解…。ショック。いくら世界のことに触れる機会が少ないとはいえ、もう少し知識があると思ったのに。
『FACT FULNESS(ファクトフルネス)』の冒頭にある「世界の事実」に関するクイズに答えたが、見事に不正解の連続。自分がどれだけ世の中のことを知らないか思い知らされた。
「ファクトフルネス」とは、データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣のこと。本にある10の本能、思い込みを知れば、事実に基づく世界の見方ができるようになる。何に恐れ、何に希望を持てばいいのかを見極められるようになる。
この本を読んだきっかけは、上記のような紹介が雑誌に紹介されていたからだ。データや事実から、思いもよらぬ発見があるかもしれないと思い、読んでみた。
予想通り、この本を読むと、「世界の姿」を知り、「自分の姿」を改めて発見することができる。
実際に、いくつか「自分の姿」を考えるきっかけとなった本の内容を紹介する。
1 分断本能「世界は分断されている」という思い込み
「途上国」と名付けられた枠内にいるのは、全人口の6%、たった13カ国だけだ。
こんなに途上国が少なくなっているなんて知らなかった。自分はなんと無知だったんだろう。
また、「世界各国の平均所得と平均寿命」の世界保健チャートを見て、自分の住んでいる「日本」は、なんて幸せなんだろう!としみじみ感じてしまった。このチャートは上に行くほど健康で、右に行くほど金持ち。日本は右上に位置し、世界の中でもトップレベルにいる。ふだん、あたり前に好きな食事ができて、お風呂に入れて、自転車で子どもたちを送り迎えして…。
4つの所得ごとの暮らし(『ファクトフルネス』より)
「時間がない」、「子どもがワガママ」、「毎日の献立、買い物、食事づくりが大変!」などなど、そんな不満なんて、世界の人の暮らしぶりを知ったら、なんのその。好きな本を読んだり、家族と過ごす時間があることがどれだけ幸せなことか。
2 過大視本能「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
著者のハンス・ロスリングがモンザビークのナカラ地区にある病院で働いていた時のこと。目の前の赤ちゃんを救いたくても、医療器具が整っていないせいで、経口補水液を流すくらいしかできなかった。それを見ていた友人は、
「すべての患者に対して、全力を尽くすべき(点滴を打つ努力をしろ!)」
と言ったが、ロスリングの考えは違った。点滴の準備だけで30分かかるし、未熟な看護師が失敗する可能性も高い。もっと病院外の衛生環境を良くすることに労力を使ったほうが多くの命を救えると。そして、彼は衛生プログラムをつくり、地域の人たちがそれを支え、彼が監督するシステムを作り実行した。
このことは、私の仕事にもあてはまる。
私は、学生のころ、数学教師を目指して大学に行った。だが、教育実習に行って考えが変わった。
「数学を、もっと多くの人が役に立つカタチで広めたい」
そこで、算数や数学の「教材企画・編集」の仕事に就いた。自分の数学の知識を、1コマ40人のクラスへ伝えるよりも、いっぺんに何万人が使う「教材」というカタチで伝えることができる。
よく上司が話していた。
「『木を見て、森を見ず』の社員が多い。」と。
目の前のことをただこなすだけではダメ。もっと広い視点から、自分や社会を見なくてはいけないと。
3 犯人捜し本能「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
p283 犯人ではなく、原因を探そう。物事がうまく行かないときに、責めるべき人やグループを探してはいけない。誰かがわざと仕掛けなくても、悪いことは起きる。その状況を生み出した、絡み合った複数の原因やシステムを理解することに力を注ぐべきだ。
この内容を読んだ時、正直、胸が痛かった。
それは、5歳の我が子の行動について。
・いつも我が子がイライラしていたり、口が悪かったりするのは、彼自身のせい?
(保育園で覚えてきたのか?発散する場がないのかもしれない。)
・テレビばかりダラダラ観てるのを親が「観すぎ!」と怒るが、それは彼自身のせい?
(親のほうから歩み寄って、何か他のことを提供できていないせいでは。ゆっくり彼と向き合う時間をもてない、もたないせいなのでは。)
・「もう!こんなに散らかして!早く片付けなさい。」と怒ってしまうが、それは彼自身のせい?
(おもちゃが増えすぎて、片づけられる場所がない、片づけの決められた場所がない、おもちゃを整理できてない親のせいなのでは。)
・「おもちゃ買って!」と毎日ダダをこねるのは、彼自身のせい?
(うまく今あるものを使って遊べるよう提案できない親のせいなのでは。)
我が子を責める前に、システム全体を見直す時間を取っていきたい。
4 ファクトフルネスを実践しよう
p314 ファクトフルネスを使ってみよう
教育
最新の事実に基づく世界の見方は、子供たちにこそ教えるべきだ。4つの所得レベルで人々がどんな暮らしをしているかを教えるべきだ。ファクトフルネスを実践できるよう、子どもたちを訓練するべきだ。ファクトフルネスも批判的思考のひとつと言ってもいい。
・世界には健康と所得のレベルがさまざまに違う国があることと、そのほとんどは中程度だということを子どもたちに教えよう。
・自分たちの国の社会と経済が、世界の中でどのあたりに位置するかを教え、それがどう変わっているかを教えよう。
・自分たちの国がいまの所得レベルになるまでに、どんなふうに進歩してきたのかを教えよう。その知識を使って、ほかの国の人たちがいまどんな生活を送っているかを理解しよう。
・貧しい国の所得レベルは上がっていて、物事はいい方向に向かっていることを教えよう。
・自分たちの国は進歩していないと誤解しないよう、昔の生活が実査にどんなものだったかを教えよう。
反対に見える2つのことが、両立することを教えよう。世界では悪いことも起きているけれど、たくさんのことがよくなっていることを伝えよう。
・ニュースの見方を教えよう。本能に訴えかけようとするメディアの手口を見抜けるようになれば、悪いニュースを見ても不安になったり絶望したりしないですむ。
・文化や宗教のステレオタイプは世界を理解するのに役に立たないことを教えよう。
・数字でけむに巻かれないよう、どんな手口にだまされやすいかを教えよう。
・世界は変わり続けていることと、死ぬまでにずっと知識と世界の見方をアップデートし続けなければならないことを教えよう。
私は今、家庭科の教科書を作っている。
自分自身が変わり、子どもたちへ「事実に基づいた世界の見方」を届けていきたい。
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