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人生100年時代のライフキャリアアドバイザーに聞く セカンドキャリアの充実とは

筆者はアラフォーの会社員。定年後にどう過ごせばいいかなんて、今までほとんど考えたことがない。しかし、人生100年時代。このまま仕事と家事、子育てだけの毎日でいいのか。これからの生きるヒントを知りたい。今、生き生きとしているシニアはどんな人か。逆に、どんなことがシニアのキャリアで問題になっているのか。キャリアアドバイザーの原尻さんに話を聞いた。


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原尻大一(はらじりだいいち)さん(62歳) キャリアアドバイザー
1957年神奈川県鎌倉市生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、博報堂に入社。営業として20年間資生堂・JT・NTT東日本などを担当。2003年より本社の管理部長、総務部長、関連会社の執行役員を経て、58歳で役職定年。その後、本社人材開発戦略局に異動。シニアのキャリア自律支援の充実をはかるために、キャリアカウンセリングを学び、研修業務を担当。キャリアコンサルタント、キャリアカウンセラーの資格を持つ。趣味はバイク、キャンプ、カメラ。

筆者:まず、現在のお仕事について教えてください。

原尻:今は、博報堂の人材開発戦略室という教育部門に所属しています。キャリアアドバイザーとして、キャリア自立をテーマにしたシニア向けの研修をしています。

筆者:定年後にどうしたらいいのかという研修でしょうか?

原尻:2つあって、1つは53歳で全員研修をします。60歳で定年で辞めるのか、それとも他の会社へ転身するのか、再雇用なのかというのを58歳の時に選んでもらうためのものです。会社の制度の説明や、年金を含めたお金の話をきちんと伝えます。それから、人生の棚卸をしてもらい、考え方を整理していくワークショップや、個人面談をしていき、58歳の時にもう一度おさらいのような研修をします。

キャリアアップからキャリア充実へ

筆者:研修や、面談をしていて、みなさんの反応はどうですか?

原尻:最初は、みんな処遇に目が行きがちなんですよね。自分がどう扱われるのか、会社からどう評価されているのか。すごく収入が低いと文句を言う人も中にはいます。いわゆる外的キャリアを気にする場合が多い。でも、内的キャリアが大事で。自分が求められていて、それに答えたり、成長実感を味わえたり、充実感をもてるところで働きたいという気持ちに変わっていく人が多いです。

筆者:研修などでアドバイスをすることで、みなさん変わっていったりするのでしょうか?

原尻:価値観の棚卸をしてもらいます。過去を振り返って、自分が生き生きしていたり、わくわくしたりした体験を3つ、修羅場を体験したことをひとつ、あげてもらいます。わくわくするということは、自分の好きなことだから、モチベーションに直結します。それを抑えながら、修羅場を克服したということは、成長しているわけですよね。そこで、身についたことがあるわけです。それらが自分の軸になっていて、そこから自分は何をしたらいいのかを発見してもらう。このワークショップに取り組むと、腹に落ちる感じを体験してもらえます。その気がやる気になり、最後に本気になって元気になってもらいます。

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生き生きしているシニアはどんな人?

筆者:原尻さんのまわりで、生き生きしている人は、どんな人ですか?

原尻:自分の居場所をみつけて、作っていける人です。「プランド・ハップンスタンス」が大事になってくる。プランド・ハップンスタンスとは、偶発性とキャリア形成の関係を示すもので、スタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱した理論です。自分から、偶然の出来事を引き寄せるように働きかけて、積極的にキャリア形成の機会を創出するというものです。変化の激しい現代は、キャリアの8割は偶然の出来事によって形成されています。綿密に計画通りにというわけにはいかなくなってきているんですよ。

筆者:実際に研修していた中で、どのような人がいましたか?

原尻:普通の営業だった人がいたのですが、定年後に九州にある町の副市長になった人がいます。

その人は、定年する時に息子さんが医学部に合格して、突然、大金が必要になって働かなきゃいけなきゃいけなくなったんです。当時、内閣府の地方創世プログラムが走り始めていて、民間の経験者をそのプログラムに送り込むという時、手を挙げて行った人でした。最初、1年目の時は、その土地のお作法というか、予算のことなどを学ぶだけで精一杯のところを、当時まだそこまで広まっていなかったSNSで、その日の出来事を自ら発信し続けていったんです。そうしたら、そのことが行政の市長たちの集まりで評判になったらしく、偶然というか、本当にいろいろな出会いを通して、副市長に就任するまでになったそうです。

筆者:まさに「プランド・ハップンスタンス」ですね。その人のつねに前向きな姿勢からくるものだと思います。


趣味は50歳に始めたバイク

そこからさまざまな広がりがあった

筆者:趣味は、バイク、ハイキング、カメラなどいろいろありますね。特にバイクはのめりこむほどお好きだとか。始めたきっかけは何だったのですか?

原尻:50歳を迎える時に、総務部長をしていて、会社の移転を仕切るという大きなプロジェクトを任されていたんです。そのプロジェクトが終わるという時にこのまま終わったら、なんだか燃え尽き症候群になるかもしれないと思いました。それで、本や雑誌で「バイクで人生が変わる」ということに触れて、やってみようと思いました。免許を取る前にハーレーを購入しちゃいました。

筆者:すごいですね!バイクに乗ったことがないのですが、初めて乗った時はどうでしたか?

原尻:ものすごく楽しかったですよ。ひとりでどこまでも行ける感じがするし。バイクで旅をするようになってから、キャンプも好きになりました。バイクに載せるキャンプ道具を1つずつ揃えていく楽しみがあり、キャンプ仲間もできました。

筆者:どうやって、仲間と知り合っていったのですか?

原尻:キャンプで重鎮の方がいまして、その方に薪ストーブの練習会で教えてもらったり。自分でもOFF会を開いて、交友関係が広がっていきました。

筆者:働きながら、趣味も持たれていて、仕事以外での仲間を持つっていいですよね。

原尻:そうですね。いろんな人がいるっていう前提がありますよね。会社の中にいるとつい忘れてしまいがちですけど。会社がお膳立てしてね。人間関係も会社を中心としたものになると、狭くなっていったり。発想も、元気の源も小さくなるというか。そこで調子が悪くなると全部調子が悪くなってしまう。そういった意味では、サードプレイスを持つことがすごく大事です。それが楽しい趣味に絡まっている人間関係だともっといいですね。
体験の幅が広がっていくと、新しことにチャレンジができたりすると思います。

原尻さん

活動の軸を変えていく

筆者:今後、原尻さんがやってみたいことは、何ですか?

原尻:今、社内で生き生きと働いているOB・OGにインタビューする機会がありまして、その体験談は、体験価値として受講生にすごく役立っていると思っています。人生って結構そういう体験を知ることの積み重ねだと思うので、先人たちの物語をもっと広げていきたいです。あとは、紀行文も書いてみたいです。

筆者:最後に、定年のことをまだそれほど考えていない40代の人にアドバイスやメッセージをいただきたいです。

原尻:会社にいる人でしたら、一度、組織の外を見て、経験を積むようなことをやってみるといいと思います。組織の中にいると、どうしても役割とか人間関係とかが決まってきて、可能性が縮まるというか。割と固定した見方になってしまうので。例えばどこかの自治会でもなんでもいいので、新しい役割で活動してみると自分の可能性が見えてくると思います。よく働くことは、自分の可能性に投資していくことだと思うので、ちょっとした道を探しておくと、先々で役に立ったりしてくるものですよ。活動の軸を変えて何かやってみることをお勧めします。

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