銚子でコーラス活動!39才保育士ママから学ぶ「子どもも自分もハッピーになるヒント」
青野香織さん 39歳 保育士
千葉県銚子市の保育園で保育士として働く。小学3年生の男の子と、年長の女の子のママ。5年ほど前からコーラスグループ「おかあさんs」を結成。地元の公民館や広場のステージに立ち、親子で歌って踊れる楽しいコンサートを届けている。仕事、子育て、家事、コーラス活動と日々生活を送る彼女にどんな気持ちで過ごしているのか取材した。
●「おかあさんs」の活動
・学生の時から音楽大好き
小学校、高校と合唱部に所属していた青野さん。高校の先生からは「大学も歌で受けてごらん」と言われたほど。大学は、横浜の短大の保育科へ進学。その後、横浜で保育士として勤務。働いている時も歌を習いたくなり、出会った先生は童謡の作曲家の先生だった。その先生から、子どもの歌をたくさん教わるようになった。
・銚子で「おかあさんs」を結成
結婚し、実家のある銚子で暮らすことに。出産後、長男が1歳の時、児童館でたまたま知り合った今のメンバーと意気投合。3年後の長女が1歳の時に「おかあさんs」を結成した。
メンバーは3人。ひとりは小学校の音楽の先生。もうひとりはゴスペル好き。同じ「子育てママ&歌大好き」でつながった。
・口コミで「おかあさんs」が知られるように
最初のステージは、知り合いのママが誘ってくれたフリーマーケットの公園。ママ友のお客さんがいっぱい来てくれ、あたたかい目で応援してくれた。
それが今では隣の市の公民館からも声がかかるようになり、銚子市の子育て支援課からも「子育て広場10周年」のステージに出てほしいと声がかかるほどになった。
だが、そこに至るまでには、子育て、仕事、家事など、いろいろなことを乗り越えてきた。
「練習は、誰かのおうちでやってて。1歳の子どもも連れてだったから、大泣きしたら和室を貸してもらって授乳して、寝かしつけて、また練習!」そんな日々を繰り返していた。
・わたしたちも元気をもらっている
「全然知らないお母さんが、ステージをみて泣いてくれてて。すごい感動しましたって。たぶん、落ち込んでたとかなんかあったのかもしれないけど。子どもたちは、体を動かして大きい声で歌ってくれるし。楽しんでくれてるっていうのがわかるとこっちも嬉しいし、元気をもらってる。」
いつも生き生きとした表情の青野さん。元気のもとは、ステージに立つことで、観客から返ってくるパワーだった。
●日々、考えながらの子育て
自宅から車で25分のところに海がある。子どもたちも海が好きで、ドライブだけでもよく海を回ることがあるのだそう。
「毎日をのびのび楽しく送らせてあげたい。」
というのが青野さんの子育てのモットーだ。
だが、なかなかうまくいかないことも、しばしばある。
銚子で保育士になって4年目。最初のころは、子どもたちを急がせてしまうことに罪悪感ばかりがあった。
「朝も急がせちゃうし、私が働いてなかったらまだ寝ててよかったのにって。なんだかかわいそうに思えて…。」
今でもその考えは変わらないが、働いているうちに、自らの子どもを育てる前と後とで、保育士としての考え方が変わったことに気づいた。
「前は、1歳児だったら、年度末までにこのくらいは目指しておいて、こういうことができるようになっていてほしいっていうのが強くて。月ごとに目標があって、頑張れーって進めてたりもしてたんだけど。子どもをもつようになって、お母さんってそういう目線で子どもを育てていないなって。ひとりひとり個性があって、発達も違うし。保育の教科書で勉強したことが頭にあったけど、それももちろんなんだけど、もう少し見守る気持ちでやさしく接してあげられるようになったかも。」
実際に自分の子どもを育てることで、「なかなか教科書通りにはいかないのが子育て」ということを母親という目線から、もっと近くで感じることができ、おおらかな気持ちで子どもたちを見守れるようになったのだ。
「保育士に見せる子どもの姿と、おうちでの姿は全然ちがうものなんだなーっていうのも自分の子を育ててみて、わかったし。やっぱり別に子どもは意識して無理しているわけじゃないけど、保育園にいる時って頑張ってるじゃない。みんなもこうやってるし、今こうやってやるときなんだなって頑張ってる。おうちになると、ママにすごい甘えてみたりね。お母さんから園に、家で甘えてばかりいるって相談されたことがあって。園ではそうでもないのになって。こういうことなんだなって自分の子を育ててみてわかった。」
まさに筆者の子どもと同じだ。筆者には、5歳の長男と1歳の次男がいる。どうしても次男に構ってばかりいると、長男が「お母さん、お母さん!」と何度も呼んでは甘えてくる。最初は「ちょっと待ってね。ひとりでできるでしょ。」から始まり、しまいには「なんで我慢できないの!」と怒ってしまうことも。すると長男は、「保育園でも我慢してるよ!なんでおうちでも我慢しなきゃいけないの!!我慢ばっかりでヤダヤダヤダ!!!」と泣きわめいたことがある。そのことを話すと、
「言葉にできるのがすごいね!お利口だよ。大人になるまでに人に迷惑かけないように無事に人として育てばいいからそんなにガミガミいわなくてもいいって思えるようになったのは、自分の子を育ててみて、また保育士の仕事を再開してから。」
・やっぱり我が子はかわいい
「ママこれ半分こしよ!とか、すんごい小さいものなのに半分こしてくれたり。ママと一緒の色がいいなとか。ママお休みだ!一緒に遊べるね!とか。上の子も下の子もそんな感じで。自分を必要としてくれて。自分の存在を肯定してくれるっていうか。」
ふたりとも、思いやりのあるやさしい子であることが伺える。「自己肯定できる子」に子どもたちが育ってほしいという。そのためには、親の「待つこと」が大切だ。
「それは違う」とすぐに伝えてしまうと、言われた本人は「あ、違ったんだ…。」とシュンとしてしまう。そこでテンションダウン。シャッターが閉まる感じ。そういうこともあるから、「違う」ってことは強調しないで「こうしたほうがいい、こっちのほうがベスト」というのを伝えたい。すぐに答えを言うのではなく、どうすればいいのか、子どもの思考を邪魔しないように声をかける。子どもが自分から「こうすればいいんだ!」と表情が変わり、どうすればいいかに気づいた時、それを見るとすごく嬉しくなるのだそう。
「子ども自身に考えさせ、解決方法をみつけ出す力」は、小学校以降も重要だ。
筆者は、小学校と中学校で算数や数学の講師をしていたが、特に算数を教えるときは、一方通行の与えるだけの授業にはしなかった。問題を解くための計算力や考え方(道具)は、子どもたち自身に備わっている。その道具をどのように組み合わせて使いながら、新しい問題を解くか。教師の働きかけが重要になる。自ら考えさせ、たとえその答えが間違っていたとしても、考える力はその子の力になり、ただ解き方を与えて暗記させるだけとは違い、次に同じ問題が出てきても、スムーズに解けるようになる。
小学校前から、「自ら考える力」が大切だということに改めて気づかされた。
●保育士の仕事
保育士の仕事は、大変だと言われているが、話を聞いていると本当に大変だ。
「やっぱり毎日帰るとヘトヘト。返ってきたら、床につっぷして動けなくなるくらいのときもあった。」
何人もの子どもを、安全にのびのび保育をしていくことは、相当な体力が必要だ。
また、保護者とのコミュニケーションにも気をつかうという。
「ちょっと言葉選びを間違えて伝えちゃうと、お母さんもショックを受けちゃうし、そんなつもりではなかったのにって感じることもあるから。慎重に伝えるようにしている。」
子育てする親は、お迎え時などに保育士から園での子どもの様子を聞いて、一喜一憂することはよくあるのではないか。
「うちの子、大丈夫かしら…。園で先生やお友達に迷惑かけてないかしら…。ちゃんと、あれこれできているかしら…。」
長い一日の様子がわからない分、保育士からの言葉がすべてのように思えてしまう。
・保育士がもっと増えたらいい
「先生の数は、子どもひとりあたりに対しての人数は増えたけど、もっとたくさんいていい。赤ちゃんは、寝ている時間は10分おきにブレスチェックしたり、体勢をチェックしたりとかあるから。お昼寝している間に、制作の準備とかもなかなかできなくて。やっぱり、勤務時間内だけでは、絶対終わらない。もう少し、先生が増えたら、子どもたちに、もっとやさしくなれるだろうし。」
今回は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オンラインでの取材だった。画面の向こう側の青野さんは、日差しをたっぷり浴びた元気な顔が印象的。はつらつとしていた。忙しい中、日曜の午後ということもあり、「ママー、まだ終わらないの~?」というかわいい声が聞こえてきた。
彼女の周りには、楽し気な子どもたちや、協力したり応援したり趣味を一緒にやったりするママ友が集まってくる。
「幼稚園や保育園のうちは、そんなに自分のことができなくても、全然大丈夫!おとなになるまでに、育っていけばいいから。今できないことをそんなになげかないで、楽しく好きなことをやってる時間が多いほうが、その子は幸せかなって。」
彼女と話すことで、フッと軽い気持ちになれた。
忙しくても、自分がハッピーになれることをする。
そうすれば、自然と子どもにもやさしくなれる。
子育てに悩みながらの毎日だが、できるだけガミガミ言わずに、楽しく過ごせる工夫をしながら過ごしていきたい。
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