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親と子の。

最近みている2001年の金八先生シリーズ。


15歳の少年と高校生のお兄ちゃんが、二人で荒れたアパートの一室に住んでいる。

手作りのご飯もなく、部屋は散らかり放題で、ゴミが散乱している。

15歳の弟は、非行に走る兄に言われるがまま、窃盗や万引き、

クラスメイトの財布からお金を盗んだりしている。

兄はいつのまにか薬物中毒、高校にも行かずにアパートに女を連れ込んで

覚せい剤を打っている・・・・


未成年の兄弟二人が、なぜこんなことになるのか?

親はなにをしているのか?親はいないのか?


薬物中毒の兄が狂って、アパートで火事をおこし、

弟を鉄パイプで半殺しにしてやっと介入してきた両親。

小綺麗なごくふつうの身なりで、夫婦で近所に惣菜屋を営んでいる。

なぜ?育児放棄?

でも飛び込んできた両親は必死の形相で、母親は泣いている。なぜ?

なぜここまで放っておいて泣く?いまさら泣ける?

自分が招いた結果に泣くな、お前に泣く権利はない・・・


それが正義

と、親は子を愛して世話を焼いて当たり前だ、

愛情不足はいつの世も子が犠牲者で被害者なのだ、と、思う自分の浅さに恥ずかしくなった。

ドラマを見て心を動かされることはあまりないのだけれど、またひとつ、自分の決め付けを知る。


自分の身近にも似たような話がある。

その母親は、結婚でひとり、遠いところからやってきて 

性格的に新しい場所で友達もつくれず、嫁ぎ先の家でひたすら家事をやっていた。

気の強い姑にひどい扱いを受け、気の弱い舅と、夫も味方になってくれず、

ひとり耐えていたときに妊娠、男の子が生まれた。


初孫に姑は喜び勇み、小さい赤ちゃんを母親の手から奪うように、

自分の子であるかのようにせっせと世話をした。

そのうちに母親は「この子は自分が産んだ自分の子なのだろうか?」と思うようになり、

それでも毎日3食家族の食事を作り、来客があれば召使のように世話をし、

掃除も買い物も全部一人でした。

姑からのひどい言葉を夫に伝えても、夫は口先ばかりで何の行動にも出ず、

次第に夫婦間も冷めてきていた。

でも初めての男の子、その子は本当にかわいく、天使のように純真でけがれがなかった。

特に寝ている顔を見ていると、その神々しいような寝顔に涙が出た。


ある日、姑に差別的な暴言を吐かれ、たまらず、何も考えず、

1歳の男の子の手を引いて家を飛び出した。電車に乗り、行くあてもなく、

その夜はどこか知らない町のホテルに泊まった。

何もしらずにホテルのベッドで眠る男の子。

その寝顔をみていると、ごめんねという言葉があふれ出た。


自分には帰る場所がない。この子を一人で育てる家もない、お金もない。

自分は愛のないあの他人の家に、この子を連れて帰って、

これからも耐えて暮らしていくしか道はない・・・・・・


その家に帰ると、舅がでてきて、

まず言われた「おばあさん(姑)に謝ってくれ。そうしないといけない、頼むから、

頭を下げて『出て行ってすみませんでした、私が悪かったです』と言ってくれ」

という必死の言葉。ねぎらう言葉は少しもなく、あったのは必死の保身だけだった。

魂が削れるとき、あまりに深く傷つくと、思う気持ちとあまりに違う言葉を人に伝えると、

魂が削れたように感じる。

このときの「すみませんでした 私が悪かったです」は、二度と忘れられない


その後、母親はその居心地の悪い家で心の余裕がまったくないまま暮らし、

アパートにやっと引っ越し姑達と別れた後も、

どんどん冷めていく夫との関係をどうしようもできないでいた。

そのうち1歳だった男の子は高校生になり、悪い友達とつるみはじめ、

母親となんども口論、怒号、包丁がでてくるときもあった。


高校を出ると、もはや母親と会話をすることもなくなり、

親子の縁を切った、と30代のある日彼は言った。


その子も被害者、母親も被害者。

息子は母が1歳の自分の手を引いて家を飛び出したことを知らない。

寝顔を見て泣いていたことも知らない。

自分がどんな状況の中育てられて、誰がどんな風にして、自分の幼い頃にかかわったのか、

母親がどんな状況だったかを知らないし、母も伝えない。

そのために息子は母を恨むように・・・・一生、母の愛を求める。


誰が悪いわけでもなく、気の強い姑だって、田舎から都会に出てきて、

病気がちで働けない夫の代わりに自分が頑張らねば・家族を支えなければ・

恥ずかしい思いをこどもたちがしないよう私が・私が と、

周りが見えなくなるほど必死で働き、育児をしてきたのかもしれない。

田舎では6人兄弟の長女でこどもの頃から「お姉さんなのだから」と

きっと下のきょうだいの世話を一番頑張って、たくさん我慢して、

我慢も我慢と思わずにやってきたのだろう・・・


そう思うと、悪い親 と決め付けることなんてほとんどできないんじゃないか。

悲しい巡り合わせで、頑張ってきた結果、こうなってしまった

必死に頑張ってきたけど この社会で必死に働いてきたけど

でも考えが足りずにこどもの心が離れてしまった・・・・

そこに愛はあったのに。愛が伝わらずに、こどもは大きくなってしまった。

愛はあるのに、伝えられなくて、愛を求め続けて。


ほんとはこんなに、あいしているんだよ


そんな人がどんなに多いか。はがゆくなるな。


前述の、金八先生のその育児放棄のような両親は

こどもたちのために必死に寝る間も惜しんで働いていた。

両親の世代は15歳で親元を離れて出稼ぎにいった時代。

「金の卵」といわれただひたすら働いてきた。そんな二人がこどもをもち、

こどもたちには自分たちのようにはなってほしくない、

しっかり勉強して大学も行かせたい・・・

その思いで、二人で力を合わせて全ての時間を労働に費やしてきたのだった。

そののち、こどもたちが「お店の声がうるさくて、別の家で静かに勉強したり暮らしたい」

と言い始め、それを許可するとなし崩しに関係性が崩れた、

アパートの部屋にも入れてくれない、ご飯を持っていっても受け取らない、

というストーリーだった。


これはドラマだけど、どんな人にも理由がある。

それは本当で

その理由を知らずに非難するのは浅さの証明だと。


そしてどんなひどく無責任で、非難されてしかるべき、にみえる人物がいても

(重犯罪など社会で生きる人としてやってはいけない一線はあるが)

その背景をさぐろうとする、そのきもちがすき。


みんな、この大変な社会の中で、必死に頑張っているんだなあ。

そして学び合っているんだなあと、尊い。

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