見出し画像

「インタビューって、なんだろう?(後編) 」このひより座談会Vol.1 #このひだより

インタビューギフト『このひより』として、さまざまな記憶・思い出を文章にして残してきた私たち。これまでのインタビューや本づくりを振り返りながら、「インタビュー」や「言葉にすること」の価値を改めて考えました。

前編で話した「インタビュー」から、話は徐々に「文章づくり」の話へ。「大切な記憶を、言葉に。」という『このひより』のテーマの「言葉に」の部分です。ただ聞くことで終わらず、「文章にする」ことに、どういう思いをもって取り組んでいるのか

一緒に文章を紡ぐ仲間だからこそ話せること、話したいこと。いろんな言葉が飛び出しながら、ふんわりとしていた考えをちょっとずつ言葉にしていきます。

【このひより】
一緒につくる、インタビューギフト『このひより』。大切な人の忘れたくない記憶を言葉にし、本として贈るサービスです。ライターや編集者を中心とした仲間3人で活動しています。

【前編】はこちらから。


振り返れる状態にすることの意味

ウィルソン:前回の話に、私たちのインタビューは「本にする」というアウトプットの目的があることにも価値があるんじゃないかって話題がありましたね。

佐々木:そう。改めて考えていたんだけど、インタビューされる側が「これでいいの?」って不安になるのは、まだその時に話が整理されきっていないからだと思ったんですよね。だから、喋っている間も、喋り終わった後も、なんかちょっと不安っていう。

ウィルソン:自分の中ではつながってるように思っていたエピソードだけど、話していくうちに「あれ、本当につながってるかな?」「必要なエピソードだったのかな」みたいなね。

佐々木:うん。だからやっぱり、インタビューの時間はそれだけでとてもおもしろいけど、それがちゃんと振り返れる状態になることも、すごく大事な気がしました。

染谷:振り返れる状態、ね。確かに。

佐々木:それが「文章」じゃなきゃいけないのかって言ったら、ちょっとまだ確信を持っているわけじゃないけども。話したまま終わり、じゃなくて、なにかしらの形になって返ってくるというか。

ウィルソン:正直、聞いている私たちもその段階ではつながりまで考えられていなかったりするしね。仕事でも、インタビュー直後はまだ全然整理できていないことも多いです、私。

佐々木:わかる! 僕も聞きたいポイントは意識してるけど、記事の流れまで明確に頭に思い浮かんでるわけじゃないんだよね。

ウィルソン:インタビューって流動的だから、話についてくのに必死だよね(笑)

佐々木:僕は結構、文字起こしをして気づくことが多くて。「さりげなく出た言葉だったけど、最後の話にめっちゃつながってるやん!」とか。

染谷:伏線回収! みたいな感じ。

佐々木:そう。だから文字起こしから先がすごく楽しい。執筆でも編集でも、バラバラだったものが組み合わさっていく感覚があるんだよね。その人の輪郭がちょっとわかっていくような……。麻菜さんは少し違う?

ウィルソン:いや、わかる! 例えばインタビューの最後に、その人が大事にしていることが出てきたとして、それを聞いてからもう一度インタビューを振り返ると見え方がすごく変わったりすると思う。それがすごくおもしろい。

「聞く」と「書く」はセット

佐々木:この座談会も、どういう状態になるのかわからないで話してる(笑)。

染谷:文字起こししてみないとね……(笑)。

ウィルソン:私ずっと、インタビューは好きだけど書くのは好きじゃないなって思っていたんだけど、「聞く」と「書く」がセットになってるのが好きなのかもしれないな。

染谷:あー、聞いて受け取ったものを書いて、つなげたものを相手に返す、みたいな。私もインタビューしたことを文章にして贈る、というのは、キャッチボールができてる感覚があるかも。

ウィルソン:そうそう。私の場合は、ずっと聞くだけでも消化不良になっちゃってつらくなりそう。聞いたことはちゃんと形にして返したいって思うから、インプットとアウトプットの両方あることが自分の中で重要なのかなって、今喋りながら思った。

染谷:おもしろいね! 将史さんもそんな感じ?

佐々木:うん、僕は言語化されるところが割と快感なんだよね。だから、自分が編集するときに文字起こしまで見させてもらったり、ライターさんと一緒に構成を考えたりするのも 、すごく楽しい。

ウィルソン:“編集者”って感じするなあ……。

染谷:じゃあ記事作り、楽しくてしょうがないんだね、2人とも。

ウィルソン:いや、原稿書くのは正直めっちゃ大変……。インタビューも、1本勝負だから毎回緊張して吐きそうになっている。

佐々木:わかる。

染谷:あー。

ウィルソン:「つらい」とか言いながら、よくインタビューギフトのサービスなんてやってるよね、私たち(笑)。

私たちのアウトプットは「言葉」

ウィルソン:将史さんと楓さんは写真も好きだよね。写真も「形として残す」のひとつの形だけど、アウトプットとしては文章が一番しっくり来るのかな。

佐々木:僕はそう。

染谷:写真は全然別物って感じ?

佐々木:写真は自分の自己表現に近い印象があって。僕は文章でも一人称で書くのが苦手だから、その意味でインタビューが合ってたのかもしれない。あと写真も、撮る瞬間よりプリントが好きだな。モノクロ写真のプリントで、引き伸ばし機(印画紙に焼き付ける機械)の光の当て方とか、液に浸す時間とかで出来上がる写真が変わるのがおもしろい。

染谷:へえー! やっぱり「どんな形にするか」みたいなところが好きなんだ。

佐々木:でも、言葉も写真も全てを表現できるわけじゃないとは思うから。言葉選びや構成を通して、いかに相手に、見えないところを想像してもらえるかみたいなことは考えている気がする。

ウィルソン:私が文章を書いてていいなと思っているのは、時を遡れるところなんだよね。写真や映像はその瞬間を残すけど、文章だったら記憶を遡って、読者も一緒にそのときに戻れる感覚があるなって。

染谷:たしかに。

ウィルソン:まあ記憶も変わっていったり、後からの解釈もあったりするから、完全にそうとも言い切れないんだろうけど。

佐々木:どんな形であれ、全てを完全に表現できるとは全然思っていなくて。前に紹介した長田弘さんの言葉に「そうそう!」という気持ちになったのも、普段から仕事をしながら、この壁に何度も突き当たってるからだと思う。

ウィルソン:そうだよね。書けば書くほどに言葉や文章の限界も感じるというか。

このひよりを、新たな側面を知る「言い訳」に使ってもらえたら。

染谷:今回みんなで話してて、インタビューを形にして出すのはゴールでありつつ、それだけじゃないような気もした。インタビューの時間や出来上がった文章をきっかけに、またこれからを考えるヒントになったりするのかなって。

ウィルソン:うん、確かに。もう一度戻るけど、インタビューってなんなんだろうね(笑)。

染谷:私は『このひより』でのインタビューの活動が、自分にも大きく影響している感覚があるんだよね。人の話を聞くことが、自分の人生を振り返ることになって、「生きるってなんだろう」とか「どういう風に生きていきたいかな」とか、そういうのを相手を通して見させてもらえるような感じがある。

(左)ウィルソン麻菜/(中央)佐々木将史/(右)染谷楓

ウィルソン:インタビューをされる側も、する側も、その時間をきっかけにまた何かを考えることになるよね。

佐々木:僕は周りに医療や福祉の関係者が多いんだけど、その現場では「人に話を聞く」のって、プロセスそのものをすごく大切にしている人が多い。だから、僕はやっぱりインタビューはアウトプットありきだと思う。記事づくりの仕事も、組織のビジョンや文化を言語化していく仕事も、アウトプットを前提に動いてるところで似たものを感じる。

ウィルソン:思考や情報の整理って、ひとりだとなかなか難しいよね。情報整理も、記憶を呼び起こす感覚も、人から聞かれて初めて出てくることがある。それが、『このひより』のインタビューでも起きてるのかなあ。楓さんが前回も言っていた「この場は、自分のことを話してもいいんだ」という前提に立てるのは、インタビューならではかもしれないね、たぶん。

佐々木:そうだね。普段の会話とは違うからこそ生まれるものがあるし。それができる最大級の「言い訳」として、このひよりを使ってもらえるといいのかもしれない。


おわりに

結局のところ「インタビューってなに?」の答えは出なかったような気がします。でも、これもまた、きっと正解がないことなんだろうなと私たちは考えています。

頭のなかで浮かんだことを、言葉を選びながら口に出してみる。それを受け取った相手がまた言葉を返してくれる。そういう贅沢な時間を、私たちは「インタビュー」と呼んで楽しんでいるのかもしれません。

今回はインタビューの話がメインでしたが、せっかくなので、『このひより』としてこだわる「本」という形についても、また話してみたいと思います。私たちの思いの共有と思考の言語化になる座談会、どうぞ次回もお楽しみに!

<次回(予定)>
私たちの考えるアウトプットは、なぜ文章・本なの?



このひより
一緒につくる、インタビューギフト『このひより』。大切な人の忘れたくない記憶を言葉にし、本として贈るサービスです。結婚や出産、退職などの贈り物や、自分自身の人生を残す機会にも。

「こんな場合も本にできますか?」というご相談をいただければ、みんなで一生懸命考えます。お気軽にお問合せください。

■SNS(TwitterInstagram

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?