鮮烈なヴィジョン

情動の面を含め、体調が悪い時はひたすら眠い。だらだらと家事も何もできないまま横になってうとうとしているしかない。今日も頭痛と全身の凝りで身動きが取れなかった。軽い熱中症だったかもしれない。
メンタルのバランスを崩して通院していた頃もよく動けなくなってひたすら横になっていた。そんな中、浅い眠りの中でヴィジョンを見た。出産のヴィジョンだった。わたしがこどもを産むのではなく、わたしが母から産まれ出てくる場面だった。
全身が熱くて、窮屈で苦しかった。周りは暗くて色がなく、灰色の壁のようなものに包まれているのがわかった。壁はぐしゃぐしゃした半透明のビニールのようなものに覆われていた。新車の内装みたいだとも思った。
頭の上の高いところで、(産みたくないー)(産みたくないー)と唸っている声が聞こえてきた。母の声だった。それでもわたしは産道の中をじりじりと進んでいった。そうするよりこの苦しさから脱する方法がなさそうだった。随分長い時間が経って、急に周りが明るくなり、圧迫されていた身体が自由になった。その時わたしは(勝った!)と思った。そこで目が覚めた。目が覚めてもまだ身体が熱かった。
ただの夢の話である。ただ、目覚めた後にも残っていた身体全体の感触、母の唸り声、自分の(勝った!)という高揚感、いずれも鮮烈すぎて、忘れることができないでいる。一体何に勝ったのだろう。少なくとも母との勝ち負けではなかった。この世に生まれ出る一か八かの瀬戸際を切り抜けられたという意味だったのだろうか。

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