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もう、過去にとらわれるのは、終わりにしよう

 こんな事は考えるだに悲しい事ですが、
 もし読者の中に、自分をあまりに理想型の、観念的に
 あるひとつの型にはまったものに(あえて人間とは申しません)
 無理やりにはめこまれ、石膏人形の如くつくりあげられ、
 その為に両親を恨んでいる様な方はないでしょうか。
 なければ幸いです。
 しかし、もし一人でもあったら、
 ただちに親をにくむ事だけはおよしなさい。
 それは自他ともに非常に不幸な、そしてかしこい事ではありませんから。
 親にしても、子供の為に、よかれとねがってした事にきまって居ます。
 それにその石膏の方ほど毀すのに容易なものはありません。
 ただ、自分が一人の人間である事を自覚さえすれば、
 そんなものは、一夜の悪夢の如くバラバラに崩れてしまうでしょう。

『たしなみについて』白洲正子(河出書房新社)

「トラウマ」や「カルマ」といった言葉と共に
自分ではどうにもならなかった過去の出来事から
離れることが出来ずにいるといったことは、あるものです。
むしろそうしたものがひとつもない人など、
存在しないのではないでしょうか。
それもまた、人生経験のひとつとして
織り込み済みなのだと思ってみたらどうでしょう。
そのうえで、一方的な判断をやめてみるのです。
少なくとも私は、そうすることによって
ずいぶん心が軽くなりました。だんだんと、ではありますが。





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