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梅すだれ

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恋も仕事も頑張る江戸女子、お千代の物語!ですが現在、猿彦や松之助など天草の隠れキリシタンのストーリーから、雑賀の国の物語が展開中。
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#戦国時代

31-2 梅すだれ 御船/木花薫

この頃の家に天井はなく家の上部は柱がむき出しで屋根の裏が見えた状態であった。床に垂直に立てられた通し柱の上部を水平につなぐ横木、差鴨居に板を張り床にして寝泊まりや物置に有効活用したものが厨子二階である。低くて狭いが小さな窓を開けることで換気がなされ、寝るのはもちろん座っている分には十分な空間である。 その二階へ上がるためにかけてある梯子の下へ行くと、お滝は「ご飯炊けたよ」と大きな声で叫んだ。もそもそとお桐が梯子の上に顔を出した。 「上へ持ってこうか?」と訊くと、「下で食べ

30-7 梅すだれ 御船/木花薫

マサが旅立ち意気消沈するお滝。追い打ちをかけるように二日後に大嵐が肥後を襲った。強い風がこれでもかと大粒の雨を打ちつけて来る。そのすさまじさは二階が吹き飛ぶのではと思われるほどであった。お滝とお桐は一階の座敷で身を寄せ合い息を潜めて嵐が過ぎ去るのを待った。

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30-3 梅すだれ 御船/木花薫

六尺はある大きな体と四角い大きな顔。そこに太太と生えた眉には貫禄がある。今までにも侍は食べに来たがこれまでの誰よりも堂々とした立ち姿であった。

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29-1 梅すだれ 雑賀 旅立ち

時は戦国。タカベの絶賛する「こんないいところはない」という雑賀にも激震の走ることが起こった。室町幕府の将軍、足利義昭が織田信長を見限って挙兵したのだ。根来の鉄砲隊は義昭の部隊であったから、当然反信長派へ転向、雑賀は混じり気なく信長の敵となった。

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28-6 梅すだれ 雑賀 お滝の恋

ざわつく心のまま過ごした二日間が過ぎ、マサに会える朝が来た。しかしお滝のはやる心とは裏腹に、嵐が海を荒らし雑賀の村に激しい雨と風を叩きつけた。誰も外には出られず、ただ家の中で嵐が通り過ぎるのを待つばかり。その家も吹き飛んでしまうのでは心配するほどの風が低いうなり声をあげながら吹き荒れている。

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28-4 梅すだれ 雑賀-お滝の恋 / 木花薫

日に日に気温の上がっていく夏。浜で握り飯を売るお滝とお桐に、太陽は容赦なく照り付けて来る。上からの陽ざしに加え、砂を反射した陽は下からも差しこんでくる。暑さをしのぐためにお滝は竹の皮を薄く剥いで日よけの網代笠を編んだ。同じ幅のひも状にしたものを横と斜めにぎっしりと編みこむ網代編みは、決して陽を通さない。手ぬぐいを頭からかぶり鼻の下で結び笠をかぶれば顔に陽ざしが襲い掛かることはない。目だけ出ている状態で暑い夏も元気に握り飯を売り歩いた。

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28-3梅すだれ 雑賀-お滝の恋 / 木花薫

この頃、お滝たちのいた関東も移り住んだ畿内も、ずっと西の九州もその遙か南の琉球も、どこもかしこも争いだらけであった。地侍による自衛自治区であり大名の支配を受けない雑賀とは言え、各地の大名が争う戦国時代において争いと関わらずにいることはできなかった。雑賀の鉄砲隊は各地の大名の傭兵部隊として戦いに出ている。

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27-3 梅すだれ 紀国雑賀 / 木花薫

トメばあさんのところでは、ちっちの両親が竹を割いてトメばあさんが籠を編んでいた。

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27-2 梅すだれ 紀国雑賀 / 木花薫

お滝はちっちの母親に竹を割くことから教わった。一節切り出した竹を縦に割っていく。半分に割り、それをまた半分に割り、またそれを半分に割り、と小指の爪の幅になるまでひたすら割いた。

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26-4 梅すだれ 紀国雑賀/木花薫

それからというもの、お滝は寺小屋へ行くのが楽しくなった。墨絵を一日中描けるのだ。ほかの子どもたちが暗唱をしようとご院主の話を聴こうと、お滝はお構いなしに墨絵を描き続けた。ご院主もそんなお滝を咎めることなく、むしろ「境内に咲いている花を描いたらどうや?」と勧めるものだから、お滝は益々墨絵を描くことに熱中できた。

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26-2 梅すだれ 紀国雑賀

宿屋へ墨絵を観に行けなくなったお滝は、次の日の朝、渋々と寺小屋へ向かった。背中にタカベの視線を背負いながら。いつもは「行ってくる」と朝飯を食べたらすぐに出かけるタカベであったが、この朝はお滝とお桐が寺小屋へ行くのを見送ってから仕事へ行った。

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26 梅すだれ 紀国雑賀

その日の夕飯は、いつものようにお滝とお桐の作ったご飯を三人で食べた。娘二人が寺子屋のあと料理の仕方をハモの嫁に教わってくる。それを二人で家で作る。当然お滝はお桐といっしょにそうしていると思っていたのに。タカベは食べながらお滝に尋ねた。

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25-4 梅すだれ 紀国雑賀

翌朝はげん爺の言った通りに隣の家から粥をもらった。隣りの一家は十五年前に近江から越してきたそうで、外から来たタカベたちに好意的だった。

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25-3 梅すだれ 雑賀

おふみは店の前の坂ではなくて、店の裏の畑の横にある坂を上った。紀ノ川と雑賀川に挟まれたこのあたりには村が八つある。これをまとめて雑賀荘という。げん爺は雑賀壮の西の端にあるこの村の頭をしている。

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