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梅すだれ

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恋も仕事も頑張る江戸女子、お千代の物語!ですが現在、猿彦や松之助など天草の隠れキリシタンのストーリーから、雑賀の国の物語が展開中。
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29-3 梅すだれ 雑賀-旅立ち / 木花薫

うつむいて食べる娘二人に、 「握り飯が売れなかったのか?一日くらい気にすんな」 と何も知らないタカベはいつもと変わらない。お滝は咳払いで気持ちを整えると言葉をゆっくりと吐き出した。

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29-2 梅すだれ 雑賀-旅立ち/ 木花薫

マサにお桐も一緒にと言われたお滝であったが、お桐に九州の話をすることはためらわれた。雑賀の人間だと言ってもいいほどにお桐は雑賀に溶け込んでいる。そんなお桐が聞いたこともない西の果ての九州へ行きたいと思うだろうか。お桐に言い出せないまま数日が過ぎた時、三日後に出る船で九州へ行けることになったとマサから告げられた。

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28 梅すだれ 紀国雑賀 / 木花薫

お桐が十五歳になる正月、タカベはご機嫌だった。正月用にお桐が作った煮しめを食べながら、目の前の娘二人を眺めて(大人になったなあ)と感慨にふけった。

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26-2 梅すだれ 紀国雑賀

宿屋へ墨絵を観に行けなくなったお滝は、次の日の朝、渋々と寺小屋へ向かった。背中にタカベの視線を背負いながら。いつもは「行ってくる」と朝飯を食べたらすぐに出かけるタカベであったが、この朝はお滝とお桐が寺小屋へ行くのを見送ってから仕事へ行った。

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26 梅すだれ 紀国雑賀

その日の夕飯は、いつものようにお滝とお桐の作ったご飯を三人で食べた。娘二人が寺子屋のあと料理の仕方をハモの嫁に教わってくる。それを二人で家で作る。当然お滝はお桐といっしょにそうしていると思っていたのに。タカベは食べながらお滝に尋ねた。

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23 梅すだれ 肥後の国

珍しい魚や数の少ない魚を番頭が買い取り、残りを庄衛門が買い取るという区分けが自然とできていった。毎日たくさんの魚の買い取りをさばいていく庄衛門であったが計算を間違えることはなかった。冴えた頭で計算しながら漁師たちとの会話も楽しむ庄衛門は、次第にこの仕事が自分に合っていると思うようになった。熊本へ売りに行くことへの未練もなくなり買取に励んで三年が経った時、買取担当の者が一人増えた。それと同じくして新しい漁村が魚を売りに来るようにもなった。干物屋の主人がまた規模を大きくしたのだと

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