凍える 10/12

シリアルキラーとそのキラーに殺された子供の母親、シリアルキラーの研究をしている女精神科医、
それぞれがそれぞれに狂っていて恐ろしい舞台だった。後味の悪さは「彼女を笑う人がいても」と似たものを感じた。演出が同じ人だから舞台装置も似通っていたのかもしれない。

個人的に狂い方では母親が一番怖かった。子供を愛していないと言い、でも、娘が死ぬとその事件に執着し、無理やり犯人に会って自殺に追い込む、でも、そのことをなんとも思っていなくて、結局全ては自分のためでしかない。サイコパスの兆候だな、と思ったから。そういう意味では狂ったのではなくて元からずれているというべきかもしれないが。

じゃあ、ラルフは虐待の過去があるからソシオパスということができるのか?

ただ、虐待された過去があっても大半は犯罪者にはならないわけで、なにか要因があったかと思われる。劇中のようにカウンセリングや検査でそこを検証すること自体に意味はあるのではないだろうか。例えば元々知的障がいがあるとか、脳損傷が起こっているとか。犯人に感化されてストックホルム症候群になってしまってはいけないからかなり工夫を求められそうだが。

そして、その上でどう伝えることが状況を受け入れることに繋げるのか、が重要なのではないかと思う。被害者家族としては自分の罪の重さを理解してから死刑(もっとも、死刑制度は倫理的にも金銭的にも問題があるから終身刑が妥当か)になるのが理想的なのではないかと思われるし。

ただ、方法として、劇中の精神科医のように肩入れすべきかといったら、彼女のカウンセリングの仕方にもだいぶ独善的だったこともあり、あれではなにも解決しない気がした。シリアルキラーの多くもまた虐待をされたわけではなく、生粋のサイコパスが多いのだし、虐待されてて可哀想、というスタンスで対応するとサイコパスなら鼻で笑われ、本当に虐待をされた人ならばただただトラウマを刺激されるだけな気がしてしまう。いっそ、シリアルキラーばかりの少年院みたいなところを作ってしまうのもひとつなのか?と頭をよぎったが、それはそれでやっぱり危ないんだろうか。

最後に坂本くんの感想を書くと、演技が本当に脳のどこかが欠落した人のようで、いつものにこにこしている柔和なおじさんとは完全に別人だった。本当に坂本くんだよね?ってなった。最後の死に際が目だけが変ないつもの笑顔だったから、ああ、坂本くんだわ、と思ったけど。アイドルだけど本物の俳優なのだと思わされて圧倒された。

チラシを見て面白そうだから見ることにしたけど、GfXで坂本くんを知っていたのも見に行った要因のひとつだから、推しが多くてよかった、としみじみ思った。

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