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鉛筆と消しゴム戦記

僕が小学生の頃バトル鉛筆が流行ったんですね。
六角鉛筆にキャラクターと、その効果が書いてあって、
それを机の上で転がして戦うんです。
ですから、鉛筆そのもので物理的なバトルを繰り広げる訳ではないんです。

木村くんは違いました。
鉛筆数本と消しゴム数個をセロハンテープで繋げて戦車のようにし、
他のバトル鉛筆をルール無視して物理的に蹴散らして遊んでいたんですね。

この黒船来航的な現象に初めは普通に遊んでいる子たちが抗議したのですが、
小学生のワンパク対抗心からみんな真似して消しゴムと鉛筆を繋げて木村くんに挑みました。
ですが彼のイレイザーカスタムになす術なく、
数々の仲間が散っていきました。

ついたあだ名は、鬼畜戦車木村。
彼の独裁が始まろうとしたその時、
今までパワー至上主義だった戦場に突如、知能を使った人物が現れました。
消しゴムに輪ゴムをつけるというブレイクスルーを行った男、それが、
マジックシューター吉田くん。
彼のイレイザーカスタムはこうだ、
1、消しゴムの上部に輪ゴムを装着。
2、引っ張ってから飛ばすことで速さ=力の法則を取り入れた。
3、さらに"鬼畜戦車"のパワーに負けないように、消しゴムの下部に輪ゴムをつけグリップ力の強化を実現。

初めて実力の拮抗という言葉に出会った。

両者譲らずこのブームは最高潮に大盛り上がりした。
ここで登場したのがパチンコ玉を消しゴムに引っ付けた人物。
両親パチンカスの一人息子こと篠崎くん。
彼のイレイザーカスタムはゴムと鉄のゴミだった。いわば雑魚。
実力こそないが一番キラキラしてた。

さらにお父さんのパチンコ失敗話が当時の僕たちには信じられないぐらい面白かった。その場をトークで盛り上げる男。
エピソードトーク篠崎くん。

その後段々とノウハウが末端まで知れ渡り、戦場は飽和状態になった。

そして、突然その日はやって来た。
佐野くんという、親にねだれば大体買ってくれる奴がいる。
そいつがとんでもないデカイ消しゴムを買ってきた。
今思えば文房具メーカーが作ったネタ商品かもしれない。

もちろん大人がしっかりお金をかけて作っているので、
上部だし小学生の考えたツギハギバトル消しゴムでは勝てるはずもなく、
その佐野のデカイ消しゴムに、鬼畜戦車は壊され、
マジックシューターは吹っ飛ばされ、
篠崎は早退した。

正直、佐野くんも含めて全員が「これは…ねぇ」という空気になり、
このブームは幕を閉じた。

余談ですが、僕は勝てたことがないぐらい弱かったので、
みんなの消しカスを集めて練りケシを作っていました。

「これを螺旋丸にする」って僕は篠崎くんに言ったのを覚えてる。
「俺はこれあるからいいや」って大量のパチンコ玉を篠崎くんが僕に見せた時は、
丸くてキラキラしてるからこれで良いやって言っていると当時思ったけど、
パチンカスサラブレッドとしての篠崎くんの目覚めの瞬間だったのかもしれない。

マジで鉛筆なんか2日目には突起物としてしか使われてなかった。

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