見出し画像

【試し読み7】祖母漫画は家族の潤滑油(『うつには祖母がよく効きます』より)

こちらのエッセイは、こうの みさと著『うつには祖母がよく効きます』に収録されています。

祖母漫画は家族の潤滑油


 読者の方からは「おばあちゃんがかわいい」「自分のおばあちゃんに会いたくなった」「ほんわかする」とありがたいお声をいただくことも増えたのですが、もともとは、祖母への軽めの愚痴をネタにして描きはじめたのが祖母漫画。

 「ちょっと聞いてよ、うちのばあちゃん、こんな変なこと言うんだけど~(でも可愛い)」というのが基本スタンスです。身内だから描けるネタとでも言いましょうか。

 祖母漫画を描きはじめる前までは、家族は祖母の物忘れやヘンテコな口グセなど、気になる行動があっても、なんとなく見ないフリを決め込んで、受け流すようにしていました。当時の祖母の口グセは「また一人暮らしする!」。お互いに、かなりストレスが溜まっている状態です。

 ところが、最近は「聞いて、聞いて! 漫画のネタが見つかったよ!」「お前、聞きたいか。さっきばあちゃんがな……」と、家族が口々に祖母のおもしろいところ、おかしいところを楽しそうに語ってくれるようになりました。特に、昔は祖母との関係がギクシャクしていた母まで「さっき、ばあちゃんがおもしろかったんだけど……」とうれしそうに話してくれる。孫としては、心からほっとしています。

 見ないふりやスルーのほうがかえって気をつかったり、ストレスになっていたのかもしれません。祖母に対しては、漫才で言うところの「ツッコミ」に回ることで、家族のコミュニケーションにグルーヴ感が生まれました(笑)。

 祖母漫画は、今や家族の潤滑油です。

 今後、祖母も私も、当然歳を重ねていきます。だんだん、祖母の老いをネタにすることが不謹慎だと言われるようになるかもしれません。それでも、私は、祖母漫画を描き続けたい。

 祖母という人が生きていたこと、その周りに家族がいたということ、そして、私の生きた証でもあります。

 今後うつがよくなったとしても、祖母漫画を描くのが年に一度になったとしても、ライフワークとして続けていきたいなと思うのです。

・・・・・・

『うつには祖母がよく効きます』

▼ただいま好評発売中です

うつ病とADHD持ちの漫画家・イラストレーター・作家(障害者手帳持ち)|『祖母漫画ハルエさん』たちき書房 http://kono3310.thebase.in|『うつには祖母がよく効きます』旬報社 http://amzn.to/39eexG1