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客が入って来ない料理店

エスカレーター付近にあるのに、人が入ってこない。

人々は、店前のメニューが書かれている立て看板を見ると、店に背を向けて去っていく。


こんなに帰られる店も珍しい。

恐らく、この店の値段設定の高さにその要因があるだろう。



1,500円くらいで食事できてよさそうなのに、ここのイタリアンはパスタ1つで2,000円以上する。LUMINEのくせに。




そして私以外の客たちはまた、恐らく、その値段設定の高さ故にか、異様に帰らない。

良くも悪くも、この回転率の悪さにより、この店は無人にならずに済んでいる。




そして当の私こそ、この店に客が居たから入っただけの人間だ。

客の少なさと店内の停滞した雰囲気を評価し、この店に入ってきた。ただ、1時間時間を潰したかったのだ。

その為メニュー表など見てなかったから、
案内されるがまま大きいショップバッグをソファーに置いてひと段落し、脚の疲労にじわじわと気づき始めている頃、
メニュー表を裏表しながら、この店の単価の高さに気づいた。

少し考え、その店で一番安価なメニューであるエスプレッソを頼んだ。
そして、お猪口くらい小さいティーカップがでてきたのだ。これで440円。

居座る身としての礼儀として、一応チョコケーキも頼んだから、お会計は1000円を超える。

しかし、あぁ、人は全く入って来ないし出て行かないから、私が気を遣う必要なんてなかったのかもしれないな。
 


急かされない店内で寛ぎ尽くせ。
そんな土曜日の昼下がり。

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