見出し画像

映画『ピアノ・レッスン』

3月23日、TOHOシネマズ なんばのレイトショーで『ピアノ・レッスン』を一人で見に行った。今更だが感想を少しでも記したい。

まず見に行った理由だが、好きな曲「楽しみを希う心」の映画だったからだ。曲だけ知っていて、どんな映像で曲が流れるのかを知りたかった(ちなみに曲を知ったのは、NHK『2355』で紹介されてである。私は曲だけ好きで、それに関わるものは知らない事が多い)

『ピアノ・レッスン』、大好きな映画の1つに加わりました。
物語の前に、最初からMichael Nymanの曲と海の映像が流れただけで満足してしまった。主人公の言葉代わりのピアノが砂浜に置かれ、主人公と娘がその近くで一晩を過ごす所、少し羨ましいと思ってしまった(風が強いのにテントで過ごすのは心細い夜だろうが)。主人公親子がわざわざ歩いて弾きにやってくる、新郎に断られ海に置いていかれるピアノと海辺。
ピアノはその後原住民に同化した「野蛮」な男の家に移され、主人公は彼と取引して弾きに来る。取引内容に主人公が「黒鍵の数」で交渉したくだりが「ピアノも主人公の身体の一部」と表していて、同じくピアノを弾いていた者として上手いなぁと思った。

男の家に置かれたピアノは、引越しで壊れていたがきちんと修復し、調教された音に戻っていた。ピアノへの扱いから取引の裏はあるが良い奴なんだなぁと気付いた。新郎(夫)は彼女のピアノへ拒否を示しているので対照的だった。主人公が机にピアノを彫って新郎が怯えていたが、海辺に置いていかなきゃ彫らなかっただろうに。最初から彼女の言葉を奪ってしまったのだが、机のピアノで主人公は対話を諦めていないのに気付けなかったのだなぁと思った。

恋愛について語るのは野暮なので書かないが、最後には3人とも気持ちが分かると全員に共感していた。主人公が言葉の一部を抜いてまで気持ちを伝えてさよならしようとしたところ、それに嫉妬して話せない主人公に「違う」と答えるように強制し指を切り落とす夫、指を娘から渡され激情に駆られながら、泣き叫んでいた娘を保護して一緒に眠る男。全員哀しくて愛おしかった。中でも指を失い熱を出した主人公を見つめ、去ろうとしていた男に銃を突きつけ「一緒に出ていけ」と殺さず伝えた夫が印象的だった。

最後にピアノと共に海へ落ちていき、途中でピアノを諦める主人公の映像が美しかった。夢で身体の一部だったものが海辺に残っている光景を見る、にうっとりしてしまった。身体の一部が海に沈んでいる、私なら何になるのだろうかと帰りの電車から今日に至るまで考えている。私の使う物の中で、愛機のカメラがまだ一部になれそうな気がするが、完全に身体の一部とは言えないと思う。この映画で人間たちを見るのも好きだったが、ピアノがどうなっているかを特に好ましく見ていたようだ。実際にニュージーランドの自然風景とともにピアノが写るのを見て、ニュージーランドに行ってもいいなと単純に考えてしまった。

あなたなら、海に沈んで毎晩思い返す身体の一部は何ですか?


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?