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ホラー短編小説

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記事一覧

福富町トワイライトラビリンス

福富町トワイライトラビリンス

注意:短編の物語のスケッチ。大人向けの表現があります。

福富町の路地裏に、変わったサービスを提供する店があると聞いた。

その場所は牛丼屋と下着屋の間にある30センチに満たない路地の奥にある。ゴミ箱で隠されている看板を見つけ、呼び鈴代わりに吊るされたヤカンを鳴らすと、床のふたが開いて、中に入れる仕組みだ。

階下に降りると、中は薄暗い。ゆっくりと上部のふたが閉じられていく。これは敵わないとあわて

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鏡の中のアリス

かわいい女の子に憧れて女装趣味に目覚めた男が密かに家の中で女装を楽しんでいた。趣味を続けていくうちに鏡の中の自分が美しくなっていき、その姿に惚れてしまう。

仕事中も自分の女装姿を思い、仕事が進まない。上司や同僚の冷たい視線をはらいのけ、定時で退社。すぐに帰宅して夕飯も食べずに女装した自分と毎晩会話をしている。日に日にやつれていく男。かえってそれが女装した自分の美しさに磨きをかけることに。

ある

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ホラー 金縛り

目を開く。

体が動かない。

時間は深夜3時。

まだ外は暗い。

金縛りだと思う。

天上を見上げつづける。

暗さに目が慣れても、天上の細部はよく見えない。

目を閉じる。

布団の上に誰かがいる、なんて感触はない。

目を開く。

カーテンから外の灯が少し漏れていることに気づく。

体は動かないけれど、目だけは動かすことが出来る。

視界は逆

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ホラー カメラマン

中年男が男女のカップルにデジタルカメラを向けている。

カップルはうつむき、悲痛な顔をしている。男の顔に痣が見える。

中年男がフラッシュを焚き、カメラの画面を眺め、カップルにポーズを要求する。

カップルが中年男を上目遣いでうかがいじっとしていると、中年男が立ちあがり、慌ててそれに従う。

中年男がカメラを構え、気に入らないのか、カップルの女に近づくと、男が前にでて懇願する。

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ホラー ナイススウィング

右半分だけ視界と音がない。

左半分には地面と足が見え、人の叫び声が聞こえる。

左半分の視界が縦になり、恐怖する人々の顔と逃げる姿が見える。

腰を抜かして座り込む女が見える。

座り込む女に近づいていく。

何かの衝撃を受けて、視界が斜めになる。後ろを振り返ると、バットを握った男の姿。

バットが振りおろされ、視界がくるくると回転する。

視界が安定すると、バット男

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かき氷

汚い駄菓子屋にかき氷の旗が揺れている。

ある暑い日のこと。たまたま通りかかった男が、日差しを避けるために駄菓子屋に入っていく。

店内には駄菓子が並びどれも賞味期限が切れているように見える。店の奥に生きているのか怪しい婆さんが座って団扇を仰いでいる。

表のかき氷の旗を指差すと、婆さんはゆっくりうなづいて立ち上がり、奥に消えていく。

「グギョガガキャッ!」

店の奥から氷を

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うしろの人

うしろの人

会社からの帰り。

駅前のコンビニに立ち寄って、いつもの川沿いを歩いていた。

今日は早く帰れた。時間はまだ夕暮れになる前だった。

ふと気がつくと、遠くに人が立っていて、こちらを見ていた。

なんとなく、見てはいけない気がしたけど、呼ばれたような気がしたので見るともなく顔を向けてしまった。

目が合った。

そんな気がした。

急いでその場から離れようと思って小走りした。

ついてきている・・・

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