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拝啓 「なりたい自分」へ

「なりたい自分」を思い描く時、その自分は必ず未来にいる。

では、未来はどこにある?

それは常に、私の思考の中にある。

私は生まれてこの方、未来というものに、一度も出会ったことがない。たったの一度も。

未来は私の眼前に常にある。思考の中で、私の目の前で投影されている。そしてそれは、近づくとちょうど同じ歩幅分、私の元から離れていく。

「なりたい自分」を思い描く時、私は自分を、そんな未来に投げ入れてしまう。

私は、未来に投げ入れた「なりたい自分」に、生まれてこの方出会ったことがない。その自分は、近づくとちょうど同じ歩幅分、私の元から離れていく。

思考の狭間で、私は2つに引き裂かれる。「なりたい自分」と、「今の自分」。

なりたい自分?今の自分?そんな自分、本当にいるの?

この二人は常に私から離れて存在し、思考の狭間で対峙し合う。

拝啓 「なりたい自分」へ

あなたはいつも、私の知らない場所にいて、私の知らない世界線から、私のことをじっと見つめてきます。

あなたは私が産んだはずなのに、なぜか私はあなたに触れることすらできなくて、そのくせあなたは私のことをせき立てる。

確かにあなたを産んだのは私だけど、あなたへの執着を、私はどこかで手放さないといけない。

自分勝手でごめんなさい。でも私は、あなたを捨てる。

私はあなたなしで生きていく。

それこそが、私の全てを、この瞬間の全てを、本当の意味で愛でることだから。

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