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人生初フェス!しかもひとり 〜遊睦民祭 in蔵王〜

これは野外音楽フェスなど行ったこともないスーパー素人の今野くるみが、成り行きでゴリゴリの野外音楽イベントにたったひとりで参加した記録…


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数日前、、、
またもパートナーむっちゃんからの情報だった。

「山形の蔵王ってところでさ、遊睦民祭ってフェスやるみたいなんだよ。なんでも橋の下の主催者の人がやる第一回目みたいでね、それに俺の代わりに行ってきてくれない?」
橋の下??フェス??突然の情報だった。しかもその時私は、明後日に控えるロゴマークのプレゼン資料を作っていて、正直それどころじゃない。フリーランスでひとり働く身になって2年目、まだ仕事も安定しない中で生きる私にとってはひとつひとつの仕事が大きくプレッシャーがかかる。

「2日目の土曜はさ、GEZANも来るし、民クル(民謡クルセイダーズ)も、TURTLE ISLANDもいるんだよ!3日目なんてさ、THA BLUE HERBも来るし、内田直之さんもいる。もうたまんないよ!行くしかないよぉ!」
むっちゃんと知り合ってからいわゆるサブカル界隈では有名中の有名アーティストをいくつか共有してもらっていたので、その出演者名を聞いてこれは確かにすごいと興味をそそられた。しかし、2日目は13時から仕事のプレゼン。スムーズに行けば1時間で終わる。GEZANのステージは15時から。間に合うか・・・
「くるみちゃん、間に合うかじゃない、間に合わせる気があるかないかだよ」またもむっちゃんのパワーワード。ぐぬぬ…  更にこんな提案があった。「今回俺ね、このフェスの趣旨にすごく賛同してるの。だから続けて欲しいのと、イベントへのご祝儀の意味で3日間の通し券、俺が払うからさ。あなた行ってきてちょうだい。俺の分まで代わりに見てきてほしいの。」
少し驚いた。そこまで彼を突き動かせるものって何なんだろう。イベントホームページ冒頭、長い長い開催趣旨を読んでみた。今時のっけから文章で攻める公式ページも珍しい。意外にも全く堅苦しくない文章はスルスルと私の中に入っていった。・・・なるほど、納得と共感の内容だった。確かにこれは行かねば。

いつでもチャンスは急にやってくる。
私は人生初、フェスに行くことを決めた。ひとりで(不安)


そして向かえた当日。前夜はプレゼンへの緊張とフェスへの期待であまり眠れなかった。会場となる山形県山形市蔵王は山の中なので、日中と夜の気温差に対応できるようバッチリ準備完了。車に荷物を詰め込み、仕事が終わったと同時に現場へ直行できるよう支度した。
プレゼンは無事終了。クライアントの方もとても気持ちの良く応対してくれ、良い時間を過ごすことが出来た。笑顔でやりとりを終え、いよいよ山の奥地へ車を走らせた。

どきどき・・・

車を停め、会場へのシャトルバスへ乗り込んだ。乗車賃は投げ銭方式。小さな賽銭箱があった。よろしくお願いします、の意味も込め500円をチャリン。
そして会場到着。シャトルバスに同乗していた人たちの雰囲気からも感じていたが、あれっ… 私、もしやアウェイ…?みんなお洒落さんばかりだ。 私は寒くないように着てきたトレーナーに登山用のパンツにリュック。リュックには水筒とタオルとジャンパーなどなど・・・なのに周囲の人はみんな軽装で素敵な格好。急に心細くなる自分。ちびりそう。でも大丈夫、こんな自分ひとり、だれも注目なんてしやしない。自分の中でプチ葛藤をしつつ受付へ。
受付のお兄さんにリストバンドをまいて貰った。「わぁ〜 きれ〜…!」私の好きなターコイズブルーが手首でキラキラしている。幼少期の嬉しい気持ちが呼び起こされた感覚だった。そしていよいよ会場内へ。

きらきら〜

もうゲートからかっこいい。アーティストの名前とおぼしき登り旗がズラリと並び、提灯のゲートをくぐる。中は見たことの無い木造の骨組み剥き出しのかっこいい装飾があちこちにあった。のっけからもう既に圧倒された。自分のファッションのことなんて気にしている場合ではなかった。どれもこれもクリエイティブに富んで惹きつけられる。きっと私の眼は手首に巻いたリストバンドの如くキラキラしていたと思う。ウロウロ、キョロキョロ・・・

なんだかすごいところに来ちゃったぞ

そして間もなく、GEZANのステージが始まった。


私が観た各アーティストとパフォーマーの細かい感想は後に書くとして、全体を通した感想を先に記載したい。もう本当に圧倒された。脳みそバッチバチ。
私はどのアーティストに対しても熱意のあるファンというわけではなく、ごく一部の曲は知ってるという程度だったが、やはり生で見ると全然違う。どのアーティストも眼が活きていて、客席側に投げてくるエネルギー量が半端じゃない。おかげで知らないアーティストのことを知るキッカケにもなったし、本物を目の前にしてその場限りのパフォーマンスを観るからこそ、感じられる良さがあった。野外フェス初の自分でも一気に引き込まれ、身体でリズムを刻み、終始声をあげていた。

一番印象的に思ったのが、このフェスはデモ活動のようにも感じたということだ。デモは、政治や社会、文化面での問題や要求を表現するための抗議の声でもある。その活動の表現方法も様々で、ニュースなどではわかりやすく怒りをあらわにしているものばかりがピックアップされがちだが、優しい空気を纏っていたり、イベント等を通し楽しむ中で普段注目されない問題を伝えることに一役買ってるものなど様々。そして参加している人たちは、自分の時間と労力を裂いてでも伝えたい知って欲しいメッセージがあるからこそ、その活動に意義を感じ行動している。このフェスにもそんな空気を感じたのだ。みんながこのフェスの趣旨に賛同している。メインステージ向かって左に掲げられていたやぐらには「天下御免・非戦創祭」の筆文字。これに全てが集約されていたように感じた。(私が語るより、主催者のメッセージを直接読んだ方がいいと思う。こちらから是非→ https://nolad.jp/

また、参加費の値段設定についても触れたい。3日間のフェスで通し券前売り価格で6000円。安すぎると思う。フェスに行ったことのない自分でさえわかる破格さ。普通フェスっていったら万は超えるよね? 第一回目だからという理由もあるのかもしれないが、ここでまず利益を目的としたイベントではないことがわかる。きっと参加アーティストもその目的で来ていないのだと思う。開催趣旨に強い共感を持っているからこそ来ているようだった。アーティストのライブ中、曲間の一言一言からもそれを感じた。
彼らのMCはとても自由だった。ライブという形でなら他のアーティストのものをいくつか観に行った経験はあるが、どれも「日常を忘れて、ここで楽しんで発散していこーぜ!」的なものばかり。それはそれでもちろんいいと思う。だが、今回のフェスはアーティストが主催を兼ねていること、開催趣旨を大々的に掲げていることから、世の中への憤りや将来こうしていきたいという夢や希望、思っていることをそれぞれの言葉で発信していたのがとても良かった。これは他のライブとかではあまり観られないのではないかと思う。大体は出資元となる企業やスポンサーがいるからだ。ステージに上がる表現者はいても、首輪を繋がれている状態だと発言も制限される。それが今回はないように感じた。なので、ステージに上がるアーティストそれぞれがパフォーマンスの合間で一個人としての意見や想いを言う姿に、とても人間味を感じた。この人たちもそれぞれの葛藤を抱えながら、それでも生きている。その流れで、次のパフォーマンスへ繋がっていくので、訴えかけてくるメッセージもより強いものになり、終始勇気づけられる感覚だった。

パフォーマンスを終えたアーティストの方々が、普通に同じ目線の高さで会場にいる姿も印象的だった。普通に一緒にいるのが普通の感覚というか、なんだかいい意味で特別な感じがしなかった。有名だからと言って、偉ぶったり威圧感を出すこともなく、皆が同じものを見て、同じものを食べ、同じ空気を楽しんでいる。主催のTURTLE ISLAND・永山愛樹氏は3日目ラストのステージでこう言っていた。「変なピラミッドの頂上目指してるわけじゃないんです、横にどんどん繋がっていきましょうよ。」その感覚がリアルに感じることができ心地よかった。一人だろうと立場も何も関係ない、ここに居ていいんだと思うことができる素敵な空間だった。


帰り際になり、一足早く会場を抜けたシャトルバス乗り場での出来事。
スタッフテントに座っているまるで仙人のような男性に声をかけた。ほわぁ〜っとした眼差しが優しい人だった。
「シャトルバスって来ますか?」
「来ますよぉ」
「ありがとうございます」
・・・・・
「寒いでしょ、火にあたってていいですよ」
お兄さん口調はどう考えても優しい柔らかな人。パチパチと鳴る火に手をかざし、フェスで感じたことを関係者の方に伝えたいとお兄さんに話しかけてみた。
「私、今回のこういうフェスとか初めて見たんですけど」
「ほんとぉ!どうでしたか?」
「もう、本当に素晴らしくて!!本当に感動しました!!!」
「ほんとぉ!よかったよぉ、そう言ってもらってよかったよ」
「お兄さんも主催されたスタッフの方なんですか?」
「いやぁ、ぼくはお手伝いで来たの」
「そうなんですね。私今回のフェスは北海道に住むパートナーに教えてもらって・・・」
「えー!!ぼく北海道から来たの!」
「えー!!!!」
お兄さんは仕事を休んで、このフェスの手伝いをするためにわざわざ北海道から来たらしい。むっちゃんが自分は行けないのにお金を出してくれたのと同様、もはや住んでる場所とか関係なく、人を突き動かすものがこのフェスにはあるんだと強く思えたやりとりだった。


ありがたいことに他の参加者との交流もチラホラあって、最初のフェス体験としては大成功だったと思う。しかも色々な条件に恵まれていた。天気も良かったし、会場も近かったので車で行き来できたし、開催内容がハリボテなんかじゃない深く共感できるもので、えらく感動して帰ってきた。すごい経験ができた。本当に幸運だったと思う。
私にきっかけをくれたむっちゃんに感謝だし、演者の方達はもちろん、本拠地である愛知から資材を運ぶためトラックを何往復もさせて来てくれた主催者スタッフ、遠方からのお手伝いの方々など、みなさんに心から感謝だ。この文章がどのくらいの人に届くかわからないが、本当に、本当に!!ありがとうございました!!!また来てください!!私も行きます!

なんとかひとりで勇気を出して行った自分のことも褒めたい。そもそも現場に行かなければ、その世界に触れることは絶対に出来ない。機会を見捨てるか拾うかは自分次第だ。現実で、その場で、目の前で、五感をフルに使って体感してみないと自分にとっての良し悪しなんてわからないし、自分の興味のアンテナを信じ行動すれば、こんなに心揺さぶられる場所や人に出会えることを知った。でもアンテナが効いたとしても、お金や時間がないとすぐには行動できない。私はたまたまフリーランスの道を選んでみているので、いくらでも自分の裁量でコントロールしていけるはずだ。THA BLUE HERBのBOSS THE MCも言ってた。「行きたいとこ行け、やりたいことやれ。きっかけにするにはバッチリの3日間でしょ。アンタの未来を変えろ、未来は俺らの手の中」私は自分の人生を自分でドライブしてる真っ最中。この調子で進んでいけばいいのだと背中を押してもらえる言葉だった。
まだまだ生活のサイクルは安定しないが、私は自分を信じている。このフェスは世の中に対し少しでも生きづらさを抱える人に大きな勇気をくれるものだった。自分の人生よくなる、絶対自分の人生もっと楽しくなる。そう確信できるエネルギーをたくさんもらえた。


・・・・・・・・

祭りが終わり明け方朝4時、なぜか目が覚めた。
カーテンから覗く薄明かり、長い長い祭りの夜が明ける。
終わってしまう。参加した、たった2日間の出来事だったが、なんだか寂しい気持ちになった。こんな感覚、久しぶり過ぎて夜が明けてしまうことにそわそわした。


「また頑張ろう」そう、静かに思った。
心から楽しいと思える時間にまた出会いに行くんだ。



● 各アーティストのステージ感想はこちら↓

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※ この記事掲載の写真につきまして
イベント主催側の趣旨に沿って出演アーティストが写っていないことを確認した上で掲載しておりますが、万が一もし何か不都合がございましたら、コメント欄にてお知らせください。

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