6月の漁業

先月から「春網はるあみが始まった」とか「うちは春網やってない」などの会話を聞くことがあるのではないでしょうか?
なんとなく春の漁業だなということはわかるけど、何をどう獲っているのかは身近に漁業関係者がいないとよくわからないのでは?
今月は「春網漁」そして「秋鮭定置網漁あきさけていちあみりょう」について紹介します!

斜里町のサケマス漁

知床では様々な漁業が行われていますが、サケやマスを獲るのは「定置網漁」です。(その他には刺網さしあみ漁、けた網漁などがあります)
斜里町は鮭の水揚げ量が2020年まで18年連続日本一!

定置網漁とは、許可された場所に網を仕掛けておき、網の中に入ってきた魚を獲る漁法です。
少し前にニュースになっていた「日ロさけ・ます漁業交渉」で交渉されていたのはサケ・マスの流し網漁のこと。
斜里町ではサケ・マスの流し網漁は操業していません。

春網漁

春網と呼ばれているのは5〜7月の定置網による漁です。
主にサクラマスを獲っています。そして本来秋にやってくるはずの鮭もこの季節サクラマスと一緒に捕獲されます。それがトキシラズ。
鮭の最高級は鮭児(成熟しきる前の若い鮭。身全体に脂が乗っていて幻の鮭とも呼ばれます)と言われますが、同じくらいトキの方が好きという声もよく聞きます。
私も鮭の中ではトキシラズが1番好きです!甘くて美味しいですよね。

その後、ます網(小型定置網)、そして秋鮭定置網漁へと移行していきます。

秋鮭定置網漁

その名の通り、秋に鮭を獲る漁業なのですが、網はなんと岸から沖に最大で2kmまで伸びています。
漁の期間は秋ですが、準備はもうすでに春から始まっています。
水深も深いため、網もとても大きく、クレーンを使って吊り上げて修繕や点検、汚染防止剤の塗布などが行われています。

ウトロで育った私は大きなクレーンを使って網の作業をするのは当たり前だと感じていましたが、言われてみれば他の地域では漁業でクレーンを使っているのを見たことはありません。
他の地域から来た方は、まさか漁師さんの作業だとは思わないそうですよ。

今の時期に沖に見える大きな定置網漁船(陸からは見えにくいかもしれませんが、「ユニック」と呼ばれるクレーンがついています)は午前中なら春網の網起こしでサクラマスやトキシラズをとっていることが多く、午後であれば秋に向けて定置網を仕掛けるための「型」を設置する作業や、土囊を沈めたりといった作業をしていることが多いそうです!

定置網漁船。赤丸部分が「ユニック」
積んであるのはマス網
2021年7月撮影

その他

定置網漁船のほか、この時期に陸から見やすいのは、ウニたも網漁。
定置網漁船よりも小型の、磯舟いそぶねに乗った漁師さんが長い棒を持って水中をのぞいていれば、ウニ漁をしていますよ!

斜里町水産林務課提供

参考
・知床博物館 第23回特別展 知床の漁業 図録
協力
・知床博物館
・斜里第一漁業協同組合
・斜里町役場水産林務課  

広報しゃり6月号
農業
▶︎畑では除草・防除作業が中心。アスパラガスの収穫も始まります
漁業
▶︎海上の定置船は午前は春網漁、午後は秋鮭定置の準備作業中
自然
▶︎下旬から咲き始めるオレンジ色の百合の名前はエゾスカシユリ
歴史文化
▶︎知床半島が国立公園に指定されたのは昭和39(1964)年6月1日