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【翻訳】鍼灸ダイエットの問題と対策
辽宁中医药大学という大学の学報に掲載された鍼灸ダイエットについて書かれた文章の翻訳です。週末の空き時間にtwitterに書いたものをnoteに並べました(つまり細かな推敲や見直しをしていない)。原著は「私(著者)が思うにこんな問題があって、対策はこんなのがあるんじゃない。一緒に討論しようぜ」という目的で・・・いや、そんなにライトではないでしょうが・・・書かれているもので、システマティックレビューなどではありません。一部クドクドしたところは適宜割愛していますので、気楽な翻訳モノとしてお楽しみください。
张理梅,张蓉『针灸减肥存在的问题与对策』辽宁中医药大学学报,2009
张理梅,张蓉『针灸减肥存在的问题与对策』辽宁中医药大学学报,2009
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
気まま翻訳ツイート
肥満は治療の難しいBIG4に挙げられている。生活の質だけでなく様々な疾患に影響を及ぼす。鍼灸によるダイエットは有効な方法の一つ。効果がすぐ出る、副作用が少ない、安全だ。ただしいくつかの問題も明らかになっている。今回はその問題を6つ述べる。
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
1.鍼灸ダイエット効果は不安定
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
どの人にも合うわけではなく、どの人にも理想の効果をもたらすわけではない。「単純性肥満」に対する効果はよいが、体質によるものや各種の内分泌が関与する肥満症への効果は理想的ではない。また鍼刺激に敏感な患者への効果は悪い。年齢が高いほど効果が表れにくい。
臓腑のバランスを崩した肥満に対して。
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
こういった一部の患者については肥満以外の症状が出ているものである。胃火が盛んなら過度な食欲、脾虚なら(略)。こういった場合にはまずこれらの症状に対して処方を行い、臓腑のバランスを整えたのちに肥満がより効果的に改善する。
弁証論治は中医学の妙のひとつであるが、鍼灸ダイエットにも応用できる。西洋医学は標準化されていることが最善とされることから、中医師によっては特定のツボのみを用いるものもいる。ただし中医の弁証論治は個々の患者に対する処方を組み立てるものであり、
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
体質の違いや肥満の原因、肥満の状態の違いを見る。すなわち人、時、地域(※中医学基礎で教わる『3つの違い』)により変化するもので、中医学治療の神秘性(※効果が神がかっているという意味)、オリジナリティでもあるのだ。
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
個々の体質や季節、地域などにより弁証を行う。弁証、ツボの選択が正しければ肥満や症状は確かに改善され、容易に再発しない。これこそ「治本法」である。(以下同じような事を繰り返し述べているので割愛(笑))。
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
刺激量について。
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
この刺激量とは「深さ」、「刺激量」を指す。一般的に言えば5、6回治療を行えば効果が表れる。もし明らかな効果がなければ、その原因を探す。ツボは正しくとれているか?刺激量は十分か?毎回体重やサイズを測り、効果を計測し有効な刺激量を探す。ただ鍼を刺せばいいのではない。
2.部分的な肥満には部分的なツボを刺せばいいのか?
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
診察に訪れる患者の一部は「肥満」と診断するほどではないが部分的な肥満や体のバランスが整っていない状態であったりする。アゴ、腰、腹部、腕などの部分的なダイエットを求めているのだ。では、「痩せたいところに鍼を刺せばいい」のか?
答えは「否」である。かならず全身の調理によるダイエットを基礎としたうえで、部分的否ダイエットを行うのだ。そうすることでダイエットが果たされ、また効果が長く続く。弁証により全身を整え、さらに部分的な肥満に対してのツボを選ぶ(同じ場所への刺鍼を含む)。
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
3.いかにリバウンドを防ぐか
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
多くの注目を集める課題である。ダイエットするたびに体重が増えるという人もいる。鍼灸ダイエットとは、鍼灸の経絡の原理から飲食中枢を調整し、満腹感を生み、食べすぎを防ぎ、新陳代謝による過剰脂肪を燃焼させ体重を減らす。飲食療法を併用すれば効果はさらに増す。
そのため鍼灸ダイエット室では患者にダイエットレシピを採用している。ただし鍼灸ダイエットの一連の治療の終了後、食欲制限は徐々に薄れ、意思の弱い患者は食べすぎたりおやつを食べ、リバウンドに至る。せっかくのダイエットが水の泡である。
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
対策①鍼灸ダイエット時に他のツボを用いてより強固な治療を行う。例えば耳ツボ、埋線である。②科学的なレシピを採用する。特に夕食に高脂肪高カロリー食品を避ける。果物や野菜などの低カロリー食材を食べる。③適度な運動により脂肪を燃焼させる。毎日運動することで健康が保たれ
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
また精神が充実し、ぜい肉が落ちナイスボディとなる。筆者は夕食1時間後の40分ジョギングを推奨している。汗が少々出る程度でよいが、しっかり継続すること。④ダイエット教育を行う。医師とよくコミュニケーションし、患者自身に体質とダイエットに関する注意点を理解してもらう。
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
4.鍼灸ダイエットは生理調整に関与するか
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
回答は、YES。肥満の女性の一部は生理と関係が密接である。生理不順の女性は肥満になりやすい。これらの患者に対しては、弁証によるツボ選択のほか、生理調整に関しても治療を行う。
弁証とツボが適切であれば、生理は整い、患者自身がリラックスでき、体質も改善する。しかもリバウンドしにくい。ただし鍼灸ダイエットによって正常な生理に異常が生じることもよくあることである。
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
鍼灸師は経絡の知識だけで甘んじることなく、婦人科方面の知識にも精通しなければならない。生理が正しくやってきてこそ、「事半功倍(半分の労力で効果は二倍)」である。
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
5.鍼灸ダイエットは副作用があるか
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
鍼灸ダイエットは胃腸にアプローチしない治療法で、主に経絡の原理により全身の臓腑機能を調整する。しかし弁証や操作が適切でないことから副作用が発生しうる。
例えばダイエットを果たせる一方で生理不順が起こる。また鍼を刺す深度の誤りから気胸や神経損傷などが生じるなど、である。また腹部などの皮膚がたるみしわがある場合は効果が悪い。対策は、解剖知識をもつこと、鍼灸経絡の基礎理論や操作の知識、弁証を正しく行うことである。
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
異なる状況により処方を変える。固定のツボをモデル的にすべての患者に対して適用するのではない。生理周期が早い患者には基礎体温をもとに沖任を調整し、弁証しツボを選択すれば、生理不順や閉経は起きないであろう。鍼を刺す角度を理解し、大きな血管や神経、内臓を避ければ不慮の事態も起きない。
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
6.病院に行き鍼灸ダイエットを受ける十分な時間がない
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
鍼灸ダイエットはまず毎日1度、そのあとは2日に1度、毎週少なくとも2度行う必要がある。毎回の所要時間は45分ほどである。生活リズムの早い現代社会では、若者は時間を割いて治療に来ることが難しい。
(以下は僕のメモ)
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
中国らしさが2点あると思いました。まず弁証の大切さが繰り返し言及されていることです。伝統中医学では弁証論治を「これこそ中医学である証」として教わります。一部の中医師や一般では「ダイエットはこのツボを押す!」とモデル化されがちですが、それを否定しています。
もうひとつは来院頻度の高さ。原著では「まず毎日、次に2日に1度・・・」と述べています。中医クリニックでは毎日患者さんに来てもらうことがザラにあります。これは日本の鍼灸のイメージとかなり違うのでは。代替案として埋線が述べられていますが、これは日本では鍼灸師が行うと違法になりますね。
— 元サラリーマン中医師 (@yamaaaaaa9) March 7, 2021
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