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最適ワークスで暗黙知を形式知へ

近藤です。 最適ワークス の AI を開発している AI エンジン開発チームのマネージャーをしています。

ChatGPT 面白いですね。最近は、二人の AI に会話させてみたらひょっとして人間みたいに互いを "他者" として認識したりしないかな?と思いながら、それを実験するコードを書いています。楽しいです。


さて、今回は暗黙知形式知の話です。


「暗黙知を形式知へ」

最適ワークスは、製造業のお客様の持つ複雑な製造条件を基にして、生産計画を自動的に立案する機能を持っています。

そんな最適ワークスを IT 展示会などでブースを出して披露することがあるのですが、そのときに用いるコピーが

唯一の工程マンの退職が決まった

です。

生産計画業務の課題の一つである 属人化 に着目したコピーで、これを見てお声がけいただくお客様も多くいらっしゃいます。

裏を返せば、ここから、生産計画業務における属人化問題の逼迫した様子を伺い知ることができます。


属人化を解消する手立てとして何があるか ― これを探ろうとしたときに出てくる常套句として「暗黙知を形式知へ」というものがありますよね。

この句の正確な定義は置いといて、ここでは簡単に「当事者の頭の中にしか存在しない知識(=暗黙知)を言語化し、当事者以外が参照・活用できるように整理された知識(=形式知)に変換すること」と捉えます。

属人化を解消する手段としては至極真っ当な考え方ですね。


さて、最適ワークスは、生産計画業務の暗黙知を形式知にするお手伝いをします。

具体的には「最適ワークスに製造条件を設定して、それが反映されたスケジュールを出力する」という行為。これはまさしく、暗黙知を言語化し、それを最適ワークスが解釈できる形に整理し、その知識を活用したスケジュールを出力する、という、暗黙知が形式知に至る過程そのものです。

つまり「最適ワークスで計画を出力できた」という時点で「暗黙知を形式知化できた」という価値を見出すことができます。


制約条件とノウハウ

ここで暗黙知を形式知にするために、私達は 制約条件ノウハウ という言葉を用いて、知識を整理しています。


制約条件とは、絶対に守らねばならないルールを指します。

例えばレトルト製品を作る製造ラインを想像すると、当然ですが、製品は調理された後に包装されますよね。つまりここには「包装工程は、調理工程の終了後に開始されなければならない」という、絶対に守らねばならないルールが存在します。これは制約条件です。

何を自明なことを、とも思いますが、システムに「設定」するためには、やはりこのような細かいところ一つ一つ丁寧に言語化していく必要があります。


一方、ノウハウとは、少々いい加減な言い方ですが、ルールほど厳密ではないものの、良いスケジュールを作るために気にかけているコツ、といったものです。これの言い換えとして「経験則」また「ヒューリスティクス」があります。

例えば「納期を守ったスケジュールを作るために、なるべく納期が早い順番に製品を作るようにしている」といったものは、ノウハウに該当します。これは、「厳密に納期の順番で並べているのか?」と尋ねたときに「いや、必ずしもそうでない。ただ、全体の傾向としてはそう」と言いたくなるものです。


ちなみに、これら制約条件とノウハウは、数理最適化理論の定式化における制約条件とヒューリスティクスに対応しています。


形式知化する難しさ

「じゃあさっそく知識を制約条件やノウハウとして言語化しましょう!」と、言うは易し、そんな簡単な話じゃないよ、ですよね。

工程マンの方は本当に複雑なことを頭の中に展開しながら計画を立てていらっしゃいます。計画を立てる様子を事細かに教えていただいたときは、文字通りの職人的な技術に感動を覚えます。

そして同時に、その複雑さを言葉として表現することの難しさも感じます。


まず言語化すべき制約条件の種類が多いんですよね。色々な製品を作るために必要な工程の洗い出しと、その順番の制約、工程ごとに指定される設備やスタッフの特定、その処理時間、段取りの発生条件、など。

また、細かすぎる制約条件を一度に考えると、今度は整理に時間を要したり、制約条件同士で矛盾が発生していることに気づけず、そもそもスケジュールを出力できないことになっている、ということもよくあります。


制約条件かノウハウかを判別するのが難しいケースもあります。例えば、

「作る製品を入れ替えるときに段取り作業が生じる。その段取り時間をなくすために、同じ製品はまとめて作らなければならない」

という言葉。

これは一見、制約条件に見えますが、そのまま制約条件と捉えてしまうと、きっと困ります。なぜならこの言葉の裏側には「ただし急ぐオーダーが入ってきたら、段取り作業をしてでも、そのオーダーの製品を作る」という暗黙知が隠れていることがあるからです。そのため、この場合はノウハウに該当します。


特にノウハウに関しては言語化が容易ではありません。計画を立てている方が「こういう場合はこういう風に修正すると大抵うまくいく」と表現せざるを得ない、まさに職人技を、体系的に言葉で整理することに私達もまだ苦労しています。


この難しさにどう立ち向かうか

最適ワークスではこの難しさにどう向き合っているか。


最適ワークスでは、まずはスケジュールを出す、というところから始めます。

荒くても良いので、まずはスケジュールを出します。そのスケジュールを見ることで、「実はこの工程は並列に行うことができた」「実はこのオーダーはバッチ単位で工程が進むのだ」といった、具体的な言語化を自然に行うことができます。

またこの方法であれば、無用に細かすぎる制約条件を指定したくなる、といった落とし穴を避けることができます。

この「まずはスケジュールを出す」というのは、最適ワークスの中でもこだわりの一つです。それを容易にするような機能(工程デザイナーという名前なのですが)を作ったりして、他に見ないスピードで「まずはスケジュールを出す」を実現しています。


その後、新たに制約条件を追加してみて、またスケジュールを見ます。これを繰り返します。


するとそのうち、計画担当者の方の完全な代わりになることはできないにしろ、見習い程度のスケジュールを出せるようにはなります

この段階で、最適ワークスが計画担当者の方と並走する形を作ることで、計画業務負荷の軽減に繋がります。そもそも、複雑な制約条件を満たすスケジュールを一つ作ること自体が人間にとって負担であったことを考えると、計画担当者の業務量をシンプルに減らすことができます。


そして今度は、それでも残ったノウハウの言語化を試みます。しかしながら、前に述べた通り、このプロセスは容易なことではありません。それ故、ここは時間がかかるものです。少し時間をかけつつ、 AI が出すスケジュールをよくしていきます。


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