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「孫子の兵法」に学ぶスピーチ 空気に色を付け「見える化」する技術(13.用間篇)

 スピーチやプレゼンテーションを行う人の多くは、重要なポジションで活躍しているリーダーであり、時に多くの人の人生に影響を与える。にも関わらず、情報収集に無頓着であったり、怠惰な姿勢で臨むのは無責任ではないだろうか。
 スピーチやプレゼンテーションを行う人がライバルに打ち勝ち、他の人を圧倒するような成功を納めることができるのは、事前にライバルの情報を掴んでいるからである。
 ライバルの情報は、あくまでも人によってもたらされる。
 公開されている情報を分析するのも人であり、潜入しなければ掴みえない情報を手に入れるのも人である。
 ここでいう「人」とは「スパイ」を意味する。
 現代の社会に生きる私たちにとって、違法な「産業スパイ」的な行動は慎まなければならないが、前篇の「12.火攻篇」でも述べたように、「最善の防御法は、最強の攻撃法の考案によってもたらされる」という考えに従って考察してみたい。
『孫子の兵法』では、「スパイ」を働かせる方法は5通りあると述べている。
【郷間】敵国の国民をスパイに仕立て上げる。
【内間】敵国の役人をスパイに仕立て上げる。
【反間】敵国のスパイを自国のスパイに仕立て上げる。(いわゆる「二重スパイ」)
【死間】自国のスパイにわざと「間違った情報」を信じ込ませ、捕虜にさせたり、結果的に自国を裏切らせたりして、敵国に「間違った情報」を伝える。後になって事実が明らかになった時には、自国のスパイは必ず殺される運命をたどる。
【生間】敵国に行って情報収集を行い、自国に帰って来てその都度報告する。
 さらに『孫子の兵法』では、次のように述べている。
 リーダーと家臣との関係性でいえば、スパイとの関係が最も密接であり、報酬も一番高く、加えて最も秘密を要するものである。
 よほど賢い人物でなければ、スパイを使うことはできない。さらに、時に人を騙すという仕事の特質から考えれば、逆に慈悲深く正義心の強い人物でなければ、スパイの仕事をする人から信頼を得ることができない。
 加えて、人情の機微に通じ、きめ細やかな心配りができない人は、スパイがもたらした情報の真実を理解することができない。
 そして仮にスパイがもたらすよりも早く、別ルートから極めて機密を要する情報が入ってきた場合には、スパイと別ルートの情報提供者をともに死刑にしなければならない。
『孫子の兵法』の時代と現代との大きな違いは、「犠牲を前提にした目的達成は許されない」ということである。
 したがって、上記の内容をそのまま使うというわけにはいかないが、時に卑劣な方法を用いるライバルの意図を見抜き、カウンターを打つためには「あらゆる可能性」を想定した上で、「最高の防御法」を常日頃から考えておくことが必要になる。

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