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妻の実家で想うこと。

「まだ内緒にしておいてね」

娘に口止めされていたので、今日の今日まで僕は喜びを隠し続けてきました。先日、お許しが出たので記事にしようと思います。娘の内緒については、この文章の最後に明かすつもりです。それは、関連記事がいくつも書けるような「僕の喜び」でもあります。

ゴールデンウィークの1週間後、妻と娘と妻の実家へ帰省しました。
30年前に行ったグアム旅行以来の家族旅行です。

舞台関係の仕事をしている妻が一カ月ぶりに地方公演から帰ってきました。「ただいま。さぁ、出かける準備しないと」
帰宅したばかりの妻は、荷物を置くとベランダを覗きました。地方公演に旅立つ前、妻がダイソーで買ってきたヒマワリの種が芽を出しています。

「これ、お婆ちゃん家に行く一週間前にポットに植えてくれる?」
「ヒマワリ?」
「うん。お姉ちゃんが好きだったから。庭に植えるんだ」

どうやら妻は、2年前に他界した姉の好きだったヒマワリを実家の庭に植えたいらしい。妻に言われた通り18個のポットそれぞれに種を植え、土が乾かないよう毎日水をあげました。発芽率65%のはずが、お見事!すべて芽を出しました。里帰りがゴージャスなイベントに早変わりです。

妻の実家は、東京から車で4時間半走った長野県の山間にあります。20世帯ほどが点在する小さな集落です。
妻の父親は、彼女が高校生の時に他界。三人姉弟の次女として、彼女はここで育ちました。今は、80歳を過ぎた義母と弟が暮らしています。100年以上前に建てられた古民家に義母が住み、敷地内に弟が家を建てて暮らしています。土地は広大です。妻に尋ねても、どこまでが自分の家の土地なのか理解していませんでした。田畑では家族が賄うのに充分なお米と野菜を義母が一人で育てています。

Wi-Fiもないところで2泊3日の里帰り。暇を持て余した僕は、カメラを持って集落を散策……心がモゾモゾし始めました。

妻は、ここで育ったんだ。

40分かけて小学校まで通い、
堅牢な蔵で隠れん坊して、
飼っていた牛が、翌日売りに出されることを経験し、
原チャリで市内の高校までの通学途中、居眠り運転で車に激突し、
敷地内にある先祖のお墓で、何かをお願いし、

山と川と土と風……彼女は18歳で東京に出るまで、ここで育ちました。

そんなことを考えていたら、ふと僕は……僕と結婚しなくても、妻には他の人生もあっただろうって……なんか申し訳ない気持ちになりました。
妻には、僕と結婚しないという人生の選択肢もあったはずです。家庭を顧みず「仕事だから」という理由で、毎晩のように飲み歩いてました。子育ても妻に任せきりでした。「今までほんと苦労を掛けてきたなぁ」って思います。……
……
……
この気持ちを語るのは、これ以上やめておきます。どうぞ、察してください。ただ、ひとつ言えることは……残りの人生……あ、恥ずかしい。ここではやっぱり言えないや。

翌日は母の日でした。
娘が、妻に小さなフラワーをプレゼントしました。それを見た妻が「嘘。マジ!」と一気に泣き出しました。ナニそんなに嬉しいの? 泣くことないじゃん!って思うほどの泣きようでした。
そして、妻が僕にそっとプレゼントのフラワーを差し出しました。

その花に添えられたメッセージカードには……

娘から母の日のプレゼント

僕はお爺ちゃんになるらしい。
今の気分、満更じゃありません。

『娘の妊娠。お爺ちゃんになる私』は次の記事に委ねようと思います。

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