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1からはじめる京都の現代建築10選

秋ですね。
紅葉を見に京都を訪れる方も多いと思います。

京都には金閣寺や清水寺など寺社仏閣が山のようにあります。けれどどこも観光客でいっぱい。ましてや秋の東福寺に行こうものなら、散々並んだ挙句、紅葉より黒山の人だかりばかり目に入ったということも。

京都には伝統建築と同じくらい優れた近代、現代建築もたくさんあります。こちらを訪れれば、観光客に揉まれることなく、比較的静かに秋の京都を堪能できると思います。
そんな斜め上をいく京都観光はいかがでしょう。

まったくの私見ですが、京都の名現代建築10選を紹介したいと思います。(⑤⑥は近代建築ですが最近リノベーションされ、現代的にアップデートされているので選定しました。)

①京都駅ビル/原広司

新幹線で京都駅に降り立った、そこは既に名現代建築の中です。(正確には新幹線は八条口で紹介する駅ビルは反対の烏丸口ですが)
原広司さんという東大の教授を務められた方が設計されました。

特徴はJRの改札を底にホテルと伊勢丹に向かって階段状に伸びていく外部空間です。原さんは長年、海外の集落研究をされていたことから、人の居場所を作るのが上手い。そこかしこにゆっくりくつろげる場所が作り込まれています。
外部空間の豊かさでは日本一だと思います。

11月15日からは伊勢丹側の階段でイルミネーションとクリスマスツリーが始まりますので、ぜひ夕方以降にも訪れていただきたいです。

②TIME’S/安藤忠雄

駐車場ではなく商業ビルです。巨匠・安藤さんの初期の作品です。安藤さんの作品は京都にもたくさんあります。こちらは京都の飲み屋街、木屋町通の三条通側にあります。

京都の露地が生み出す奥ゆかしい空間構成を現代的に解釈しています。奥ゆかし過ぎてあまりお客さんが来ないため、テナントの入れ替わりが激しいです。カフェのテラス席は高瀬川に面していて気持ちがいいです。

斜め向かいに有名なみよしという長浜ラーメン屋があり、すごい臭いを放っています。京都では飲み会のシメの定番ですが、味は賛否両論分かれます。

③陶板名画の庭/安藤忠雄

安藤さんの作品が続きます。こちらは北山の植物園の隣にあります。北山といえば僕たちが若い頃はビームスなどもあるオシャレな街で東京の代官山みたいなところでした。ここは世界の名画を陶板で復元したほとんど外部の美術館です。

モダニズム建築のお手本のような、動線計画の巧みな美術館です。コンクリートの壁に囲われ、徐々に地下へと降りていくと、喧騒から逃れアートと静謐な時間を過ごせます。

北山通は観光客がほぼ皆無なのでゆっくり過ごせます。

④京都国立博物館・平成知心館/谷口吉生

美術館を作らせたら世界一上手い、ニューヨークの近代美術館も設計された巨匠の作品が京都、三十三間堂の向かいにもあります。

博物館・美術館は動線がなにより大事ですが、谷口さんの作品に入ると、まるで一編の映画を観たような気分を味わえます。また全てのディテールが妥協なく検討されているため、完成度は非常に高いです。

谷口建築は東京なら法隆寺宝物館、愛知なら豊田市美術館があります。

⑤ロームシアター/前川國男

京都の岡崎地区に近代建築の巨匠にして丹下さんの師匠でもある前川國男のロームシアターがあります。元々、京都会館という名称でしたが、解体の危機を逃れ、リニューアルオープンしました。

近代建築らしい重厚感があります。近代建築の象徴であるピロティを多用することで、外部空間がリッチに確保されていますので、コンサートに来た人以外も楽しめます。

リニューアル時に蔦屋書店とスターバックスが併設されたので、カフェタイムに訪れてもらいたいです。

⑥1928ビル/若林広幸

元々は武田五一が設計した毎日新聞の支局ビルでした。それを若林広幸という建築家が改修しカフェや雑貨屋の入るビルになりました。三条御幸町の交差点にあります。

名前のとおり1928年竣工というかなり古いビルでアールデコ様式で作られています。京都の近代建築遺産です。

地下のアンデパンダンというカフェは地元の人の溜まり場です。昼間からタップのギネスビールがいただけます。

⑦上賀茂神社の休憩所/長谷川豪

スペインの建築専門誌エルクロッキーにも特集された注目の若手建築家・長谷川豪さんの作品が上賀茂神社境内にあります。住宅作品が多いので見学できる作品はとても貴重です。

円形の屋根の無い広場です。無数の木の格子で結界のように形作られています。木は吉野杉を用いられています。まるでこの神社に昔からあったような不思議な雰囲気の空間です。

近くの売店でコーヒーを買うと利用できます。コーヒーはまずいです。

⑧ブルーボトルコーヒー京都/長坂常

南禅寺の近くにある京都初のブルーボトルコーヒー。Aesopやデサントブランなどショップデザインも多く手がける長坂常さんがデザインされています。

京町家をリノベーションしています。床や天井を取り払い現代的なインテリアですが、新たに取り入れる素材をテラゾーに絞り、これが庭の砂利と調和して、ミニマルでどことなく京都っぽい空間に仕立てられています。

南禅寺もいいですが、近くに無隣庵という庭園があってこちらもオススメです。元々、山縣有朋の別邸で、小川治兵衛が作庭しています。

⑨京都みなみ会館/島田陽

惜しまれつつ閉館した映画館が復活しました。デザインは関西で勢いのある島田陽さんが手掛けています。京都駅の南側、九条にあります。

サインなど細かいところまでマニアックなデザインがなされているようです。(まだ見に行けていません)島田さんも住宅作品が多いので見学できるのは貴重だと思います。

11月初旬はロシア映画祭が行われているようです。こういう単館シネマで半日くらい時間を潰す退廃した生活も京都らしくてよいと思います。

⑩大山崎山荘美術館/安藤忠雄

最後は少し離れて大山崎。京都駅からJRで20分くらいのサントリーのウイスキー醸造所で有名な街です。かつて別荘地だったようで、本美術館も本館は洋館をリノベーションして使っています。

安藤さんが手掛けた部分はほぼ地下にあり、そこはモネの睡蓮を鑑賞するためだけの贅沢な空間です。

庭園もすごく美しいです。近くに藤井厚二が設計した聴竹居もあり、こちらも予約すると見学できます。

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京都は学生時代を過ごした思い入れのある街。
もう取り壊されましたが、新風館や東宝公楽など素晴らしい建築が他にもありました。

今回は見学できる前提に公共性の高い建築を選定しましたが、他にも高松伸さんなどのマニアックな建築が京都にはまだまだあります。

近年は景観条例のお陰でヘンテコな似非和風建築が増えてきましたが、90年代までの京都は前衛的な建築家の実験場だったのです。

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