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【コラム】台湾語(台語)の歴史

 台湾語のルーツは、17世紀以降に中国大陸の福建省周辺から台湾に渡ってきた移民の言葉(閩南語)にありますが、台湾に渡って以来、台湾独特の表現や語彙が生まれ、今では独自の言語ともいえるものになっています。
 
 台湾語は、歴史的に長い間抑圧されてきました。日本植民地期後半(1937-1945)には日本語が、国民党蒋政権期(1945-1987)には中国語が、それぞれ「国語(國語)」という絶対的な地位に定められ、それ以外の言葉は教育などの公的場面から排除されました。
 
 しかし、この間も台湾語・客家語・原住民諸語など各民族の母語は家庭内などで根強く使われ続け、1980年代後半に民主化が進むとこれらの言葉も表舞台に立つことができるようになりました。今日では電車のアナウンスは4つの言葉(台湾語、客家語、中国語、英語)でなされるなど、言語の多様性がますます尊重されるようになってきています。1990年代からは、学校教育でも台湾語をはじめとする各民族の母語が教えられる場が増えてきました。
 
 台湾での中国語(台湾華語とも呼ばれる)も、半世紀の間に台湾語の影響を強く受け、今では台湾ならではの表現をたくさん含んでいます。台湾語も、この中国語の文法や語彙から少なからぬ影響を受けており、両者はお互いに影響しあいつつ台湾の中で日々変化している状態です。実際の会話では、両者が入り混じって使われることもよくあります。
 
 表記法についていえば、本書で使っている教会ローマ字(白話字/POJ)は、キリスト教宣教師が閩南語学習のために考案したのが元で、1873年にはほぼ現在のような形になりました。残念ながら現在の台湾ではあまり広まっていませんが、教育関係者では読める人が比較的多いといわれています。
 
 また、2006年教育部が発表した表記システムは「教部(台)羅/TL」と呼ばれ、教育部の教科書や辞書などで広く採用されています。POJとの違いはそこまで多くなく、片方をマスターしていればもう一方も難なく分かる程度です。目次の末尾に比較表を載せたのでそちらをご参照ください。POJとTLどちらにしても、実際の出版物においては、漢字ローマ字混ぜ書きが主流となっています。
 
 近年は、台湾語で書かれた小説やエッセイ、詩などの書籍・雑誌が多数出版されています。各種SNSに台湾語で投稿する人も多く見られます。また、台湾大学・師範大学・成功大学などには台湾語(文学)を専門に研究する学科も備えられました。そこでは、授業で使用される言語も台湾語、提出する論文も台湾語で書くことが求められることがほとんどです。
 台湾語は、すでに「口語で使われる言語」だけではなく、学習言語であり研究対象でもある「書かれる言語」になってきたといえるでしょう。今後ますますの発展が期待されます。

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