上級国民もつらいぞ

最近「上級国民」という表現を聞く。
小熊英二先生著の日本社会のしくみでは、日本社会は、大企業型が26%、地元型が36%、残余型38%で構成されていると言う。このうち大企業型のほぼ全てと地元型の上位あわせて30%前後が、上級国民だろうか。地元型の残りと残余型をあわせて7割前後が下級国民だとすれば、要は、大組織に守られている人と、そうでない人の違いではないだろうか。

上級国民とは、本人の能力とは関係なく、既存体制のうま味を享受しやすいかどうかで判断される。じっさい、年収が億単位にもなる有名芸能人などは、事務所の社員扱いでない限り残余型になるから、とうぜん上級国民扱いされない。
いっぽうで、暴行が続く息子を殺した農水次官が、公判まで自宅待機扱いになった時は、『上級国民だから逮捕されないんだ』とえらく騒がれた。当人が自首してきていて、逃げも隠れもしないから逮捕の必要がないと判断されただけなのだが、まさに『なんだ、また守られやがって』との恨みつらみが、このフレーズに集約されている。
もし上級国民とされる人々に羨ましさや劣等感を覚えるなら、それは自身が「下級国民」であると思っているからで、待遇の差に怒りを感じたりするのだろう。私も、今を含めて人生の7割は地元型か残余型で生きてきたから、理解できる。

一方で、人生の3割ほどは上級国民だった。今も、10年以上務めたOBなら入れる団体保険の安さで、元大企業社員としての恩恵を受け続けている。
たが、上級国民を続けるのは、私にとって本当に苦しかった。
守られるからには、守ってくれる対象の言うことを聞かなければならない。国にせよ大企業にせよ、上位者の方針から逸脱した存在は何らかの形で遠ざけられる。辞めさせられなくとも、希望しない部署はおろか、待遇の悪い関係会社・法人に、左遷させられる可能性もある。
家持ち・子持ちならなおさらだ。教育ローンやら住宅ローンを抱えた状態で、待遇を下げられては立ちいかないから、たとえ上位者の判断がおかしくとも従わなければならない。家族を含めて人質取られているようなものだから仕方がない。そもそも「上級国民」だからこそ、相当な額を借りられたのだから。

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SDGs的なことを書いていると思いきや、情報社会関連、大学でも教えているボランティア活動などを書き連ねます。斜め視点な政治経済文化評論も書…

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