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【2020 J1 17節】 サガン鳥栖vs横浜F・マリノス マッチレビュー

■スタメン

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■マリノス
 ・3-4-2-1
 ・前節から5人変更
■鳥栖
 ・4-4-2
 ・前節から11人全員変更

■前半

開始わずか40秒で試合が動く。マリノスボールのキックオフから一度は鳥栖にボールが渡るものの、喜田・和田のダブルボランチが原川・松岡に猛プレス。高丘までボールを下げさせ前線へボールを蹴らせて回収。
梶川から喜田に縦パスが入り、幅をとっているティーラトンにダイレクトで展開。ティーラトンは、パクジョンスの死角から抜け出したエリキ目掛けてロングボール。ボールを受けたエリキがネットに突き刺し電光石火の先制点を奪う。
開始早々のハイプレスからボールを回収し、手数をかけずにシュートまでもっていく素晴らしいゴールだった。

・鳥栖の保持

開始早々に先制されてしまった鳥栖だが後方からしっかりと繋いでボールを保持していた。

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鳥栖の基本的な形は2CBが幅を取り、その間に2ボランチが顔を出し台形を作る。また左SBの内田が低い位置を取り、後方で数的優位を作りボールを保持。
右SBの森下は高い位置を取り小屋松・林・森下の3枚でマリノスの5バックをピン留め。石井・樋口がハーフスペースに降りて来てマリノスのボランチ脇でボールを引き出す。
サントス・エリキ・マルコスの前線3枚が剥がされると中盤が喜田・和田の2枚になるマリノスに対してCFやSHがボランチ脇に降りて来てボールを受けるのは有効だった。
その中でも脅威だったのは小屋松のスピードと原川の展開力。
小屋松の対面は水沼。小屋松の攻撃・水沼の守備では小屋松に分がある。この質的優位を生かした攻撃は厄介だったが、松原のカバーや小屋松の判断に助けられた。
原川はボランチ脇に降りてくる選手や高い位置を取る森下の準備が整うとすかさず展開してくる。また直前まで相手を引きつけての展開は見事だった。

ただ鳥栖はゾーン3で多くの人数をかけていたため、最終ラインは2CBのみ。ここでボールを失いマリノスにロングボール一本で2対2の状況を作られ、決定機までもっていかれる場面もあった。

・鳥栖の非保持 マリノスのビルドアップ

マリノスのキーパーからのビルドアップ時、鳥栖はボールサイドに同数で嵌めに行く。
このプレスを回避した12分のマリノスと上手く嵌めた20分の鳥栖の両チームに得点が生まれる。

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マリノスの2点目のシーン。
キーパーからのリスタート。和田に林、チアゴに石井、松原に小屋松、喜田に原川、水沼に内田と鳥栖はボールサイドに同数で嵌めにくる。マリノスはチアゴから松原→喜田→水沼と繋ぎ、パスした後にスペースに走り込んでいたチアゴに再びボールが入る。チアゴが持ち運んで逆サイドで幅を取っているティーラトンに展開。
ティーラトンから逆サイドのエリキへロングボール。これをエリキが頭で中に折り返しサントスが2点目を決める。
このチアゴのパス&ゴーはよく見るが、得点に繋がる良い崩しだった。

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鳥栖の1点目のシーン。
マリノスの2点目と同様ボールサイドに同数で嵌めにいく。マリノスも2点目と同じようにチアゴが上がり鳥栖のプレスを剥がそうとするが、水沼にボールが入ると小屋松の前を向かせない・ボールを蹴らせない守備によりボール奪取。石井→林とボールが繋がり、チアゴがあけたスペースを林が上手く使い1点を返した。

飲水タイム後から松岡が少し下がった位置(2.5列目)でプレーするように。
これはゾーン3で人数をかけすぎて最終ラインが2CBのみになっていた事へのリスク管理と松岡がマルコスを監視することで、2点ともフリーで起点になっているティーラトンに樋口や森下が素早く寄せられるようにするためだろう。

松岡が2.5列目に下がる事でマリノス陣内に押し込んでいる時の最終ラインが同数になる問題を解決。さらに鳥栖陣内でセットした時の守備では松岡がマルコスを常に監視する事でティーラトンにSBやSHが寄せやすくなった。

そこでマリノスは横に揺さぶる事でフリーの選手を作り、3点目を奪った。

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鳥栖のキーパーからのビルドアップで前からプレスに行きボールを蹴らせて回収。
水沼→松原→喜田→ティーラトンと横に繋ぎティーラトンから大外を駆け上がっていた水沼へロングボール。これが起点となり3点目を奪った。
松岡が少し下がったことにより中央を埋めるためにSHの樋口が内に絞らなければいけなくなる。それによりボールサイドとは逆のサイドでフリーの選手ができる。マリノスは鳥栖が中央を締めてくればサイドから、横に広がれば真ん中からと使い分けが上手く出来ていた。

■後半

・嵌まるマリノスのプレス

ボールを保持することで主導権を握りたい両チーム。
後半も基本的な鳥栖のビルドアップの形は変わらず。マリノスが喜田・和田の両ボランチがより前で圧力をかけて相手にボールを蹴らせて回収していた。

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前半はマルコスが松岡を見ながら、原にボールが出たら寄せる形だったが後半はパクジョンスにエリキ、原川に喜田、原にマルコスをつかせる。サントスはボランチを背中で見ながら高丘にボールが入ったらプレス。それに連動して和田が松岡にプレス。後方から繋ぎたい鳥栖だったがこのプレスに苦しみボールを蹴らされてマリノスに回収される立ち上がりとなった。

ただ鳥栖もボールを繋ぐ意志は曲げず。
61分にパクジョンス→梁勇基、林→チョドンゴンに交代。
松岡をCBに下げ、よりボールを握る布陣に変更。ハーフスペースで降りてくる選手にボールを当てて、ボランチの選手がサポートする質を高めボールを握り始める。シュートまではいくものの点には繋がらなかった。

・走る和田拓也

上下左右に動き回り前半だけで7.0kmの走行距離を記録した和田。
前半だけで充分すぎる働きっぷりだが、後半はさらに高い位置を取り囮になる動きも見せていた。

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和田がチャンネルを抜ける動きで原川を引きつける。空いた真ん中を松原から斜めのパスで刺す。
WGとして幅を取っている前線より、中央で力を発揮する前線のブラジル人トリオの方が輝いていた。
その3人を輝かせるために裏で和田のような選手が頑張っていることを忘れてはいけない。

和田に限らずこういった自らが動きスペースを開ける動きが今日のマリノスはよく出来ていたし、空いたところを使えていた。


追加点を狙いに行く両チーム。良くも悪くもトランジション合戦が続き、後半にスコアが動くことなく3-1のまま試合が終了した。

■最後に

マリノスとしては狙いを持ったプレスからボールを回収し、開始早々に点が取れたことが大きかった。3得点全てティーラトンのロングボールから生まれたもので、大外でもできると言うところを見せてくれた。守備者よりも速く駆け上がるエリキ、水沼も素晴らしかった。

また今節最も良かったのは繋ぐのか、ロングボールで一気にチャンスを作るのかの判断・使い分けだと感じている。後方から繋いで得点も取り、相手の最終ラインの枚数が少ないと見るやロングボールを使いゴールまで迫った。
この使い分けの精度が上がれば効率的に攻めることが出来るし、今以上にボールを保持し主導権を握れると思う。

また勝っているときの試合の締め方。前からプレスに行くのであれば、後半の途中から大津・ナベコーのシャドーで相手を追い詰めるのも面白そう。中盤の選手がより大変になりそうだけど...見てみたい組合せ

最後まで読んでいただきありがとうございました!!

試合結果
 サガン鳥栖 1 - 3 横浜F・マリノス

 【得点者】
   マリノス:1' エリキ
        13' ジュニオール サントス
        34' マルコス ジュニオール

    鳥栖 :21' 林大地

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