ルッキズム

 人は外面ではなく内面である。という御触書が世に出回ってから、どのくらいの月日が過ぎただろう。気づけばルッキズムという言葉はあまり耳にしなくなり、むしろ外面至上主義が蔓延している。ような気がする。

「ありのまま」と主張するくせに、誰もがお洒落な服を着ようとしているし、美男美女に見られるように化粧をしている。それが好きなら構わない。どうせ人生は自己満足でしか埋められない。

 だが、そこに他者が媒介するのであれば話は変わる。他人が自分を満たしくれると思ってはいけない。

 そんなことはみんなわかっている。でもなぜだか社会はルックスに拘る。内面なんてクソ喰らえと一蹴する。それは、とどのつまり、分かり合うなどできないことに対する感情の発露なのではないか。相手を知ったところでそれがいったい何になろう。

 ルッキズムが悪き慣習とされていた時代はインフルエンサーの到来とともに崩壊した。SNSを開けばどこもかしこも美男美女が持ち上げられている。そして、自分たちもその土俵に上がろうと懸命に自分磨きをしている。

 それは決して悪いことではない。人は美しいものを求めてきたからこそ、今日があるのだから。ただ忘れてはならないのは、自分の美を他者のものさしで測らせないことだ。仮に測定されたとしても、それに動じてはいけない。

 どんなに自分磨きをしたとて、気づいてくれるのは身近な人だけだ。そしてその少なさに嘆き自分は美しくないのだと落胆する。だが落ち込む必要なんてない。そもそも私たちはそんなに相手へ興味がないから。相手がどんなに綺麗になったとしても、ほとんど関心がない。自分のことで精一杯だから。

 だから自分磨きなんて自己満足の範疇でやった方がいい。他者の反応に一喜一憂して時間を無駄にするなど本当に愚かだ。この世にはまだまだ魅力的なものがいっぱいある。自分がやっていて楽しいことを率先するべきだ。他人にどう思われようがどうでもいい。

 そして、僕はこの事実に気がつくのがあまりにも遅過ぎた。どうか、みなさんは自分の人生をおだいじに。

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